短くて永い、恋の話 4

 <ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとの話・その3

「どうしてお前に生きることを託すと思う?」

 僕の質問に、ルルーシュは質問で返してきた。
 計画に賛同することを伝えたあとも、僕はルルーシュにいくつか問いかけた。
 その中のひとつが、同じ罰ならば僕も死ぬべきではないかという質問だった。

「俺はほかの誰よりも生きることを望んでいる。そして、お前はほかの誰よりも死ぬことを望んでいる。だからだよ。俺には死を、お前には生きることを、これがそれぞれに課した罰だ」
「そんなの詭弁だ。罰らしい罰を受けるのは君だけじゃないか」
「お前だって罰は受ける。枢木スザクは社会的に死ぬし、一生ゼロの仮面を被って生きていかなければならない。それがどんなにつらいことかわかるか? もし仮面の中を知られれば殺される危険性だってある。俺は死ぬその瞬間がつらいだけだが、お前は何年、何十年と気が狂うかもしれない毎日を送らなければいけないんだぞ」

 仮面を被って生き続けることのつらさは理解しているつもりだ。
 だけど、ルルーシュの言葉は僕を脅しているだけにしか聞こえなかった。
 お互いの罰は平等だけど、死ぬのは一瞬だから実際には俺のほうが楽なのだと、僕に言い聞かせているみたいだ。
 (それってつまり、本当につらいのはルルーシュのほうってことじゃないか)
 しかも、彼はただ死ぬのではない。あらゆる悪をなした人類史上最悪の独裁者という名を残して死ぬのだ。
 枢木スザクの悪行は数十年後に忘れ去られるかもしれないけれど、歴史上の人物となってしまったらそうはいかないだろう。
 死んだあとだから関係ないのだと言ってしまえばそれまでだ。でも、そんな死に方を望む人間は普通はいない。

「いいか、スザク。死ぬことに意味はないんだ。だが、死を演出することには意味がある。最高の演出をするためには演者も重要になってくる。今、お前が死んでもこの世界にはなんの影響もないことを理解しろ。だから、お前にはもっと意味のあることをしてもらわなければならないんだよ」

 辛辣とも取れる言葉はわざとだろう。そうやって僕を焚き付けようとしているのだ。
 確かに、僕が今ここで死んだところでなんの影響もない。あの枢木スザクが死んだとニュースにはなっても、騒ぎになることはないはずだ。
 (計画を中止しなければ死んでやると脅してみたところで効果はないか)
 僕自身を人質に脅しをかけてみることは少しだけ考えた。
 しかし、そうしたところでルルーシュは計画の中止を口にしないだろう。だったらお前抜きでやるだけだと、仲間から外されるのがオチである。
 ずっと死にたいと思ってきたのに、自分の死になんの意味も価値もないことを知って、今さらながらに虚しさを感じた。

「運命という言葉を使うのは嫌いだが、あえて言うのならば、これも運命だったんだよ」

 ルルーシュにしては随分と不確実なことを口にする。それだけ僕は不安そうな顔をしていたのだろうか。

「そんな運命を君は恨まないの?」
「恨まないな」

 ルルーシュは笑った。とても晴れやかな顔で。

「お前と引き合わせてくれた運命に、俺はむしろ感謝しているんだ」

 あの日は戻らない。
 君も帰らない。
 僕が迎える明日は、君のいない明日だ。
 それでも君は、僕達を出会わせた運命に感謝すると言えてしまうのだ。
 君はとても強い。
 本当は脆いくせに、誰よりも強くあろうとした。
 その強さが僕には眩しく、羨ましく、とても哀しかった。
 (17.09.27)