高級アパートの一室でルルーシュは腕を組み、目の前の背中を固唾を呑んで見守っていた。
一大事だ。これが上手くいかなければ自分は終わりだ。そんな懸念を抱くほどの一大事なのだ。
「直りそうですか?」
恐る恐る尋ねると、振り返った青年がこくりと頷いた。
「問題ありません。しばらくお時間をいただきますが大丈夫でしょうか?」
「もちろんです。俺は向こうの部屋にいるので終わったら声をかけてください」
「はい」
爽やかな返事をした青年に笑みを浮かべると、ルルーシュは仕事用の部屋へ戻った。
時間は夜の十一時。業者を呼ぶには遅すぎる時間だが、どうしても今日中に直してもらわなければ困るのだ。
椅子に腰掛け、もらったばかりの名刺を眺める。
「キャメロット、か」
深夜営業の何でも屋を利用したのは初めてで若干不安はあったものの、背に腹は代えられぬと思い切って電話した。どんなに遅い時間でも対応してもらえるのは助かる。
(しかしまさか東洋人が来るとは思っていなかったな。言葉も片言だったし、アルバイトだろうか)
名刺には『Suzaku Kururugi』と刻まれていた。名前から推測するとどうやら日本人のようだ。
(きちんと仕事をしてくれるのならどこの国の人間でも構わない。いや、まったく使えなかったブリタニア人に比べれば、こんな時間でもちゃんと来てくれる日本人のほうがよっぽどいい。明日の昼にはナナリーが来るのに、テレビを壊したままにしておくなど許されるものか!)
何を隠そう、壊れたのはテレビである。
故障に気付いたのは二時間前で、電源を入れてもなんの反応もないテレビを前にルルーシュは呆然とした。
自分ひとりならしばらく放っておいてもいい。しかし、明日は世界で一番大事な妹のナナリーが遊びに来るのだ。一緒に観たい映画があるからDVDを持ってくると一週間も前に約束していたのに、肝心のテレビが映らないのでは意味がない。
ナナリーを悲しませてなるものかと早速メーカーに問い合わせたところ、返ってきたのは「本日は受付を終了しました」という機械アナウンスだった。いっそ新しいテレビを買おうかと思ったが、電器屋もすでに営業が終わっている時間だし、そもそも買ってすぐに配送が可能かどうかわからない。
一体どうすればいいのだと、壊れたテレビを前に顔を青くしていたルルーシュの目に留まったのが『キャメロット』のチラシである。
ポストに突っ込まれていたのをテーブルにそのまま置いていたのだが、「どんなご要望にもお応えします」「家電製品の修理」「二十四時間営業」「すぐに駆け付けます」の文字がルルーシュには神の言葉のように思えた。もちろん神は信じていないので、これは自分の運の良さだとすぐに訂正したけれど。
とにかく、そのときのルルーシュは何でも屋に頼るしかなかった。テレビを直してくれるのなら誰でもいい。そんな気持ちで電話をしたのが一時間前。キャメロットの担当者がやってきたのが二十分前。
チラシの謳い文句なんてしょせんは営業用だろうとまったく期待していなかったのだが、迅速丁寧な対応には好感が持てた。あとは無事にテレビが直れば完璧だ。
「これで兄としての面目が保てるな……」
ほっと息を吐き出す。安心すると途端に余裕が出てきて、喉の渇きと空腹を覚えた。そう言えば、テレビに必死で帰ってから何も食べていなかった。
とりあえず水でも飲もうとキッチンに向かえば、リビングで作業中の彼の背中が見えた。なんとはなしに眺めていると、修理が終わったのか彼がリモコンを手に取った。
そして電源が入れられる。
「付いた…!」
画面にニュース映像が映り、思わず声を上げたのと彼が驚いたように振り返ったのは同時だった。
たかがテレビの修理で子どもみたいな反応をしてしまったことに気付くけれど、一度出てしまった声はどうしようもない。恥ずかしさに頬が熱くなるのを感じていたら、彼がにこりと笑った。
「終わりましたよ」
「あ……ありがとうございます」
「初期不良を起こしていたみたいです。今までも何度か不具合がなかったですか?」
「そう言えば調子が悪いときがあったかもしれないです。あまり気にしていなかったですが」
「今後は大丈夫だと思いますよ」
「ありがとうございます。こんな時間なのに来てもらえて助かりました」
「いえ、また何かありましたらご用命ください」
ぺこりと頭を下げる様子は誠実さに溢れていて、彼への好感度が上がる。そのまま道具を片付けて帰ろうとしている様子に、ルルーシュはお茶のことを思い出した。
「あの!」
「はい?」
「あの……、せっかくだからお茶でも飲んでいきませんか?」
この家に業者が来たことは何度かあるが、お茶を出そうと思ったのは初めてだった。
深夜に近い時間だし、仕事とはいえ無理を言ったからせめてもの罪滅ぼしだ。それ以上でもそれ以下でもない。
なぜかそんな言い訳を自分自身にしていると、「すみません」と謝る声がした。
「お気持ちはありがたいのですが、お客様のご迷惑になるようなことは禁止されていまして」
「迷惑だなんて、」
「お気持ちだけいただいておきます。ありがとうございます」
たどたどしいブリタニア語で礼を言われ、ルルーシュは彼を引き留める言葉を失ってしまった。ここで強引にお茶を出しても彼を困らせるだけだろう。
「その代わり……」
彼が紙切れにペンを走らせている。何を書いているのだろうと思っていたら、どうぞと差し出された。
「名刺?名刺ならさっきもらいましたが」
「裏に僕の個人的な番号を書いています。こちらにご連絡いただければすぐに駆け付けますので」
今日も充分早かったが、さらに早く駆け付けるとはどういうことか。名刺と彼の顔を交互に見比べると、爽やかな笑顔が向けられた。
「うちの会社、基本給のほかにポイントがあって、ポイントが貯まれば貯まるほどお給料が上がるんです。個人的な依頼を受けたら僕のポイントになるので、協力してもらえたら嬉しいです」
冗談めかして言われ、名刺の裏を見る。そこには彼の言葉通り十二桁の番号が書かれていた。
(つまり、お茶を出す代わりに依頼をくれと言うことか)
ルルーシュは小さく吹き出した。無害そうな顔でちゃっかり営業をやるとはなかなかのやり手である。
「わかりました。また何か困ったことがあったら今度から直接連絡します。えっと、枢木、さん?」
「はい、よろしくお願いします。仕事中で僕がダメな場合でもすぐにほかの者を派遣しますので」
ほかの人間が来たら直接呼び出す意味がないではないかという気持ちが浮かび、ルルーシュはすぐに打ち消した。まるで彼が来てくれることを心待ちにしているみたいだ。
修理代金を払うと彼は玄関へ向かった。そのあとを追って歩く。
「では、ありがとうございました」
「こちらこそありがとう」
大きく一礼して彼が出て行った。ドアが締まり、途端に空気が静かになる。ずっとお喋りをしていたわけではないのに、静寂が妙に落ち着かない。
鍵を閉め、足音を立てながらリビングに戻る。手の中には一枚の名刺。
「くるるぎ、すざく……」
直ったばかりのテレビを前に、ルルーシュはしばらく一人きりのリビングに佇んでいた。
「こんばんは、キャメロットの枢木です」
お決まりの科白にルルーシュは笑みを浮かべた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
ドアを開けて彼を招き入れる。
「リビングの電球が切れてしまって困っていたんだ。俺ひとりだと替えるのが手間で」
「わかりました。すぐに取り替えますね」
初めてキャメロットに依頼してからすでに二ヶ月が経っていた。その間、ルルーシュはスザクを呼び続けた。
もちろん意味もなく呼んだわけではない。電化製品が壊れたり、大きな虫が入り込んだり、重い家具の配置を変えたり、どれも自分だけでは対処できないから呼んだのだ。
最初は一週間に一度のペースだったのが今では一週間に最低二回は連絡していた。もちろんすべて仕事の依頼である。
「終わったら呼んでもらえるか?」
「はい」
スザクをリビングに残し、ルルーシュはキッチンへと向かった。用意していた食材を冷蔵庫から取り出し、頭の中にレシピを思い浮かべる。日本のメニューは作ったことがなかったけれど、何度か練習してみたから大丈夫だろう。
熱したフライパンに油を引き、野菜を入れれば良い音がした。香ばしい匂いがキッチンに広がって食欲が刺激される。
野菜が柔らかくなったところで一旦皿に移し、今度はあらかじめ茹でていたうどんを投入した。こちらも同じように炒めると醤油と出汁で味付けをして、先ほどの野菜を戻し入れた。
うどんも醤油も出汁もブリタニアの普通のスーパーにはない。すべては今日のためにわざわざ取り寄せたものだ。
美味しいと言ってくれればいいのだがと若干の不安を抱きながら完成した焼きうどんを装うと、タイミング良くリビングから声がかかった。
「もう終わったのか?」
「電球を替えるだけですから。ついでに笠を掃除しようと思ったんですが、埃もなくて綺麗で僕の仕事はなかったです」
掃除は毎日している。今日は特に気合いを入れてやったから部屋中どこもぴかぴかだ。が、それをひけらかすようなことはしない。
「お疲れ様。今日の分の代金はいくらだ?」
請求された金額を渡して財布を仕舞うと、ルルーシュはにやりと笑った。
「では、これで俺とお前の間の契約は終了だな」
「そんな徹底しなくても」
「お前の会社が悪いんだ。感謝の気持ちで淹れたお茶ですら飲めないなんてふざけている。だが、契約を果たせば問題ないだろう?」
「会社的には問題大有りだと思うんだけど」
「ふん、どうせこの家を出るまで誰も気付かないさ」
いいから座って待っていろと言い残し、再びキッチンへと向かう。これまたわざわざ取り寄せた日本茶を淹れると、大盛りの焼きうどんと一緒にトレーに乗せた。
「今日の夜食だ」
「本当に焼きうどんだ!すごいね、ルルーシュ」
「感想は食べてからにしろ」
「うん、いただきます」
箸を握ったかと思えば、何日も物を食べていなかったような勢いでスザクが食べ始めた。毎回こんな調子で食生活はどうなっているのだと心配になる。しかし、頬をいっぱいにさせて美味しそうに食べてくれるのは見ているだけで嬉しいものだ。
「美味しい!本当に今まで焼きうどん作ったことないの?」
「当たり前だろう。ブリタニアに焼きうどんはないからな」
「でも味付けは完璧だし、うどんの茹で具合もちょうどいいし。醤油はともかく、ブリタニアにうどんの麺があったなんて知らなかった」
「あるところにはあるんだよ」
「探してくれてありがとう。すごく嬉しい」
満面の笑みで礼を言われ、ルルーシュも頬を緩めた。苦労して食材を取り寄せた甲斐があったというものだ。
スザクがすっかり平らげてしまうとテーブルの上を片付ける。代わりに乗せられたのはテキストとノートだった。
二ヶ月前にスザクがルルーシュ宅を訪問して以来、二人は徐々に距離を縮めていた。最初は会社の規則を盾にしていたスザクだったけれど、代金を支払うことで契約関係は終了したからいいのだとお茶を出し続けた。そんな攻防に最終的にはスザクが諦めてお茶を飲み、お茶だけだったのがお茶請けが付き、今では夜食まで出るようになった。
会話の中で二人が同い年だとわかり、ルルーシュは大学に通いながら学生実業家として活動していること、スザクは日本からの留学生で学費のためにアルバイトをしていることなど、お互いのことを少しずつ知っていった。
実はブリタニア語が苦手で必死に勉強している最中だと苦笑いした彼に、じゃあ家庭教師をしてやると提案したのは前回の訪問時のことだ。翌日大学があるのに夜中に働かせている礼だと理由を付ければ、遠慮しつつもお願いしますと言ってもらえた。それからというもの、夜食を提供したあとにブリタニア語講座を開催するのが恒例である。
お茶のおかわりを淹れ、スザクの隣に座ると勉強の開始だった。もっとも、夜遅いので勉強時間はせいぜい三十分程度だ。
早い時間に依頼すればもっと一緒にいられるのだが、バイトの終わりがちょうど夜中の零時で、それより前だとほかの客からの依頼が入っている場合がある。しかし、夜中は依頼件数が少ない上に割と自由に動けると聞いて、夜の十時を過ぎたあたりで電話をかけるようになった。
依頼を片付けてもらって夜食を出してブリタニア語を教える。その一時間を短いと思うか長いと思うかは気持ち次第だろう。
「ありがとう、明日の課題が全然終わってなかったから助かった」
「明日の課題をこんな夜中まで残しておくな」
「だってルルーシュに教えてもらったほうがわかりやすいしはかどるから」
それは自分がスザクを呼び出すと見越してのことだろうか。確かめたかったけれど、その問いは飲み込んだ。
電話すればいつでも彼が来てくれると思うのは間違いだ。スザクが来るのはバイトのためだし、そのうちバイトを辞めれば自分たちの関係はあっという間に消えてなくなる。
「じゃあ、僕はそろそろ帰るね。焼きうどん本当に美味しかったです」
「リクエストがあればまた言ってくれ」
「うん、考えておく」
手を振って出て行ったスザクを見送れば、玄関にはまたルルーシュだけが残された。
初めて彼が来たとき、なぜか別れが無性に寂しかった。その寂しさを埋めたくて二度目の電話をした。二度目の別れもやっぱり寂しくて、三度目、四度目と続き、今では一週間に何度も呼び出してしまっている。
でも、普通の客はこんなに業者を呼ぶものだろうか。今ごろになってそんな疑問が浮かんだ。
お茶だけならまだしも、夜食を出したり勉強を見たり友達のように話したり、普通はそこまでの関係になるだろうか。
「なんで俺はスザクを……」
彼を帰したくないと思った。それは友情から生まれる感情なのか。
帰したくない。そばにいてほしい。そう思うことを人はなんと呼ぶのか。
「俺は……」
スザクのことが好きなのだ。
どこかもやもやしていた自分の気持ちがすとんと嵌った。それさえわかれば、今までの自分の行いが理解できる。
彼を呼ぶのも、食事を振る舞うのも、勉強を教えるのも、すべてはスザクのことが好きだからだ。
でも、それに気付いたところでなんになるだろう。
(好きだと伝えるのか?客と業者でしかないのに?いや、それ以前に俺たちは男同士だ。伝えたところで叶うわけがない。むしろ気持ち悪がってスザクは二度と来てくれないかもしれない)
嫌だ。スザクに嫌われるのもスザクに二度と会えなくなるのも嫌だ。
ルルーシュは放心状態のまま玄関の鍵を掛けた。
これから先、自分は行き着く先のない気持ちを抱えたまま生きていくのだろうか。
「気付かなければ良かった……」
ぽつりと呟いた声がしんとした玄関に響いた。
「え……?」
スザクの告げた言葉にルルーシュは玄関先で固まった。また玄関だ、と頭の片隅で現実逃避のように思う。
「深夜の仕事だとやっぱり翌朝がつらいんだ。バイトは楽しいし時給もいいからできれば続けたいんだけど、学業を疎かにすると親や先生にも怒られるから。だから僕の仕事は今日が最後なんだ。ルルーシュには贔屓にしてもらったから本当に感謝しているよ」
礼の言葉も耳を素通りするだけでスザクを呆然と見ることしかできない。
洗濯機の調子が悪いからと電話をした。自分の気持ちに気付き、これまでの依頼は単なるおまけで本当はスザクに会いたいだけだったことが判明してしまったけれど、それでもスザクを呼ばないという選択肢はなかった。
客と業者の関係がなくなっても友達としてなら付き合いを続けられるのではないか。そんな期待をスザクに打ち明けてみようと思っていた。
しかし、帰り際のスザクの言葉でとても口にできる状況ではなくなった。
「これ次の担当者の名刺。仕事ができる人に頼んだから、何か困ったことがあったらここに連絡して。短い間だったけどありがとう」
差し出された右手を見つめる。
つまり、さようならということだ。依頼が終わったあとのいつもの別れではない。握手を交わしてここで永遠の別れをしようとスザクは言っているのだ
冗談じゃないと思った。せめて友達になれないかと提案しようとしたその日に別れを切り出されるなんてどんな三流ドラマだ。
でも頭の中は真っ白で何も考えることができない。スザクを引き留める言葉を口にしなければいけないのに、薄く開いた唇からは規則正しい呼吸が漏れるだけだ。
スザクが困ったように笑って手を下ろした。握手を拒否していると思ったのだろう。
(違う、そうじゃない、そうじゃなくて……)
気持ちばかりが逸って考えがまとまらなかった。
別れたくない。ここにいてほしい。好きだ。スザクが好きだ。
浮かんでは消えていく言葉はどれも声にできなくて、結局は押し黙ったままになってしまう。
「それじゃあ、僕はこれで」
あまりの反応のなさに諦めたのか、とうとう笑顔で別れを告げられた。荷物を持ち、背中を向け、スザクが玄関の鍵を開ける。一連の動きがスローモーションのようにゆっくり見えた。
「――スザク!」
相変わらず何も考えられない。ただ、ここでスザクが帰ったら本当に終わりだ。永遠の別れなのだ。
それだけを理解してルルーシュは息を吸った。
「好きです」
ブリタニア語ではなく日本語だった。
「俺と一緒にいてください」
彼に伝えるならば日本語だろうと日本語を勉強した。思い立ったのが三日前なのでまだその二つのフレーズしか覚えていない。でも、気持ちを伝えるならそれだけで充分だ。
たとえ振られるのだとしても自分の気持ちはしっかり伝えられる。
「スザクが、好きです」
振り返ったスザクが驚いた表情でこちらを見ていた。
気持ち悪いと言われたら立ち直れないかもしれない。だけど諦めるならそれくらい強烈な返事のほうがいいのだろうか。スザクの反応を待つ間、先回りして最悪の結果を考える。一秒、二秒と進む時間がやけに長く感じた。
「日本語、話せたの?」
ようやく返ってきたのはひどく的外れな科白だ。しかし、おかげで少しだけ肩の力が抜ける。
「練習したんだ。でも三日前に勉強を始めたからほかの日本語は話せない」
「そっか」
どこか嬉しそうに口許を綻ばせたスザクが足元に荷物を置いた。
何をするのだろうと見ていれば、そのまま抱き締められて息が止まる。
「僕も」
「え……?」
「僕も、ルルーシュのことが好きです」
一字一句丁寧に告げられたのは、ルルーシュが覚えたばかりの言葉だった。
「一緒にいてくれる?」
これは夢なのだろうか。それとも、自分は日本語の意味を捉え間違えているのだろうか。先ほどよりも頭の中がこんがらがってしまい、何をどう反応すれば正解なのかまったくわからない。
だから、言葉よりも確実に気持ちを伝えられる方法を試すことにした。
「好きです。大好きだよ、ルルーシュ」
耳に心地良い声を聞きながらスザクの背に腕を回す。しがみつくようにぎゅっと力を込めれば、抱き締める腕も強くなった。どうやら自分は間違っていないようだと安堵する。
息を吸い込むとスザクの匂いが肺を満たした。柔らかい癖っ毛が頬に当たって少しくすぐったい。
話したいことも訊きたいこともたくさんあるけれど、今はスザクのぬくもりだけを感じていたくてルルーシュは目を閉じた。
壊れてくれたテレビに感謝だと笑って。
(13.07.06)