メヌエット 1

「ルルーシュ、明日のスケジュールについてディートハルトさんからお電話よ」
「またあの人か。担当は俺じゃないって言っているのに……」
「直接お話ししたいのよ。ルルーシュにご執心だし」
「冗談でもやめてくれ」
「いいから早く」

 問答無用で内線を回され、ルルーシュは盛大な溜め息をついた。コールがぴったり二回鳴り終えてから受話器を取る。その途端、向かいのユーフェミアが目を瞠るほどの笑顔を浮かべてみせた。

「はい、ランペルージです。いつもお世話になっております」

 電話の向こうで饒舌に話すのはディートハルト・リートという男で、とあるテレビ局のプロデューサーだ。
 ルルーシュの上司である社長と懇意の間柄なのであまり無碍にできないが、それだけならさほど頭を悩ませることはない。ほかのテレビ局のプロデューサーや局員からの電話もよくかかってくるし、事務所側としても新人タレントを売り込むために何かと世話になっている。要は、持ちつ持たれつの関係だ。
 しかし、ディートハルトの場合は担当外のことでも頻繁に電話をかけてくるのが問題なのだ。しかも必ずルルーシュを指名するため、ディートハルトと言えばルルーシュというように事務所内では認識されている。
 今日も今日とて、ルルーシュが担当しないタレントのスケジュール確認をしてきたため、一旦席を外してわざわざ担当者に聞きに行くという手間を掛けさせられた。そして電話の終わりには、「ルルーシュ君もデビューしてみないか。君ならスターになれる」という熱い口説き文句を伝えられるのだ。
 デビューなんかするわけないだろうという心の声を押し殺し、今は学業に専念したいからといつもの科白を言うとようやく電話は切れた。受話器を置いたのと同時に、再び盛大な溜め息が零れる。

「ルルーシュすっごーい。毎回毎回感心するけど、こうして目の前で見ると本当に凄いわ。絶対お芝居の才能があるわよ」
「そういう慰めはいらない……」

 顔の筋肉が引き攣ったと、口角をぐりぐり押す。今の電話中の表情だけを見ていれば、苦手な相手からの電話とは誰も思わないだろう。
 実際、入ってきたばかりのスタッフからは「ディートハルトさんと仲良しなんですね」と見当違いな感想をよく言われる。そのたびに、あんなやつ大嫌いですとにこやかに答えるのはもはやお約束だ。

「でも、高校と大学を卒業したらその言い訳は使えなくなっちゃうわよ」
「そのときは就職したから業界とはもう二度と関わりませんと答えておくさ」
「納得してくれるかしら」
「納得してくれないと困る」

 スタッフルームの奥から名前を呼ばれた。今行きますと返事をすると、ユーフェミアにいくつか書類の処理を任せて席を立った。途中、スケジュールボードに記載されているひとつの名前をちらりと見る。
 (明後日の予定が変わりそうだから早めに伝えておくか)
 向かった先では、数名のスタッフが困った様子で待っていた。今度はなんだとまた溜め息が出そうになるのを飲み込み、彼らを安心させるためにルルーシュは外向けの笑みを浮かべた。
 ルルーシュの実家は幅広く事業を展開していて、ブリタニアグループと言えば世界的にも有名な存在だ。そのうちの一つに、ブリタニアプロと呼ばれる芸能プロダクションの経営があった。
 会社の歴史自体はまだ浅いものの、業界内では大手芸能プロとして幅を利かせている。俳優部門、歌手部門、バラエティ部門の三つに分かれ、最初は満遍なくレッスンを受けながら徐々に自分の適正や希望に応じた分野に特化させていくのが事務所の方針だった。
 社長を務めるのはルルーシュの次兄のシュナイゼルである。
 彼はほかにもいくつかの会社の役員を務めているが、どれもしっかり業績を上げており、一族の中ではもっとも優秀と評されている人物だった。曰く、「次世代のスターを育てたい」という夢のために社長をしているらしいが、ただ単に日本のテレビ業界を牛耳りたいだけではないかとルルーシュは密かに思っている。
 その異母兄から誘われて事務所スタッフとなったのは半年前のこと。「優秀なタレントには優秀なスタッフが必要だ。しかしスタッフの能力もまた才能で、なかなか良い人材がいない」と零した異母兄は、だからうちの事務所でちょっとアルバイトをしてみないかなとルルーシュに持ちかけた。
 何がだからに繋がるのかはわからないが、芸能界という特殊な業界に興味を持ったことを見抜いたように、「バイト代は弾むよ」とにっこり言われたのはまだ桜が咲く前の季節であった。
 あれから半年、最初こそ仕事内容や業界のルールに戸惑ったものの、ルルーシュはあっという間に仕事を覚えた。今ではアルバイトでありながら複数のタレントを受け持つまでになっている。
 もっとも、いくら優秀でもルルーシュはまだ高校生だ。日頃は学業に専念する身分で、日中は事務所にほとんど顔を出せない。そのため、担当するタレントはまだデビュー前の人間ばかりだった。彼らのスケジュールは歌や演技のレッスンで占められるため、調整に頭を悩ませる必要はあまりない。
 ただ、周りのスタッフから相談されることがたびたびあって、結果的にルルーシュが最終判断を下す場面は多い。たかがバイトがなぜこんな重要な決定をしているのだろうと首を捻ったことは一度や二度ではないが、仕事自体は面白いので苦ではなかった。
 そんなルルーシュに感化されたのか、単にアルバイトをしてみたかっただけなのか、異母妹のユーフェミアも三ヶ月前から事務所で働いている。彼女の仕事は電話の応対やコピー取りというアルバイトの募集要項に書かれていた内容そのままで、タレントに直接関わる機会は少なかった。
 最初のうちはテレビで見知った顔を事務所内で見つけて騒いでいたが、三ヶ月も経てば慣れるのか、今では誰とでも普通に接している。いつもにこにこと朗らかで可愛らしいユーフェミアとの会話は息抜きになるようで、彼女目当てに事務所に顔を出す人間がいるほどである。これはルルーシュにはない才能で、事務所とタレントの潤滑油の役割も大事なことだとシュナイゼルは褒めていた。
 (しかし、だからと言ってあまり業界の染まるのは良くないな。ナナリーもバイトをしたいと言い出しているし、コーネリア姉上に頼んでユフィには何か別のことを……)
 異母妹の今後を考えながら廊下を歩いていると、「ルルーシュ!」と聞き覚えのある声がした。立ち止まってくるりと振り返る。
 大きく手を振っていたのは、所属タレントの枢木スザクだった。駆け寄ってきたスザクは、息を乱すことなくルルーシュの目の前で止まった。

「早いな。レッスンの時間はまだだろう?」
「自主練習しようかと思って」

 今日はこれから演技のレッスンがある。お芝居は苦手なんだと本人が自己申告する通り、スザクの演技はまだまだ素人だ。しかし、苦手だからこそ努力して克服しようとする姿勢にルルーシュは好印象を持っている。
 本来なら所属タレントとスタッフは一線を引くべきなのだろうが、スザクとは歳が同じで、よく話しているうちにすっかり友達のような存在になっていた。ルルーシュにとっては初めて担当するタレントのうちの一人でもあり、だからこそ頑張ってもらいたいとついつい身内目線になってしまうのは致し方ないだろう。

「自主練なら俺が手伝ってやろうか」
「本当?」
「ああ。やることは全部終わったからレッスンの時間まで暇だったんだ」
「ルルーシュって優秀だよね。さすがは社長の弟」
「社長の弟と出来不出来は関係ない」
「そういうはっきり言うところも社長っぽい」

 どこがだと嫌そうに眉を寄せれば、スザクが可笑しそうに笑った。
 ほかのスタッフからもたまに「社長と似ている」と言われるが、そのたびに冗談じゃないと憤慨している。あんな曲者と一緒にしないでほしいと不機嫌になっていたところ、ルルーシュも充分曲者の素質があると思うけど、とのたまったのは異母妹のユフィだった。

「ほら、怒らないでレッスンしよう」
「俺は怒ってない」
「はいはい」

 スザクに背中を押されてレッスン室に向かう。
 昨今の時代の流れなのか、どの業界も即戦力となる新人を求めがちだ。芸能界でも最初から歌や演技が完璧な人間が重宝される。素人の新人を一からじっくり育てるという風潮も残ってはいるものの、人材育成の経費を極力抑えたいからとできるだけ完成された新人を発掘しようとする向きがある。
 そんな中、ブリタニアプロは新人の育成に力を入れていて、演技や歌の基礎を教えるだけでなく、社会人としての必要な教養まで叩き込む厳しいスタイルは業界内から評価されていた。ブリタニアプロのタレントは礼儀正しく仕事もできると、テレビ局関係者からは好評だ。
 売れるまでの努力はもちろん大事だが、売れてからも周囲に感謝する気持ちを忘れず持つように、というのは事務所のモットーである。あの異母兄が何を言っているのだとルルーシュは胡散臭く感じているのだが、生真面目な姿勢を積極的にアピールする方針は認めていた。
 そういうわけなので、まだデビューもしていない所属タレントは毎日レッスンに追われている。この段階で脱落したり、もっと楽なほかの事務所に移る不届き者もいるが、この程度のことに耐えられないようではたとえデビューしてもすぐに終わるよと異母兄はよく言っている。それについてはルルーシュも同意見だ。

「スザクはうちに所属して四ヶ月だったな」
「そうだけど、突然どうしたの」
「いや、頑張ってるなと思って」
「頑張るのは当たり前だよ。早くデビューして先輩たちみたいに活躍したいからね」

 きらきらとした笑顔で迷うことなく答えたスザクに、どこか眩しいものを抱いた。デビューを夢見て純粋に頑張っている姿は好ましく、俺にはないものだと少し羨ましくも思った。こんな風に必死に打ち込めるものがあれば人生もっと楽しいのだろうかとぼんやり考え、馬鹿な空想だなと打ち消した。
 ルルーシュの一族は芸能界以外にも幅広く手を広げている。そして、親族のほとんどがそのどこかで役員や社員として働いていた。たまたま声が掛かったから今は事務所の手伝いをしているが、就職する歳になればほかの兄弟たちと同じようにどこかの新入社員になるのだろう。
 所詮、父親にとって子どもたちは駒のひとつでしかない。シュナイゼルですらそういう認識だろうから俺はもっとどうでもいい存在のはずだと、ルルーシュは子どもの頃から身の程をわきまえていた。
 (スザクのように芸能人を目指せば駒から外れるんだろうか)
 ふと浮かんだのはそれこそ馬鹿げた考えだ。コネを使えばデビューできなくはないだろう。しかし、一流になりたいという意欲はないし、その前に父親に反対されて潰されるのがオチだ。

「スザクは凄いな」

 ぽつりと漏れた言葉にスザクが首を傾げた。

「ルルーシュのほうがよっぽど凄いと思うけど」
「俺は全然ダメだ」
「そうかなぁ。僕なんかよりルックスはいいし、スタッフとしても優秀だし、社長からも信頼されているし、誰が見ても文句なしだと思うんだけど」
「そんなに褒めても何も出ないぞ」
「だって事実だもん」

 はいはいと笑いながら歩いていると、「ルルーシュ!」とユフィの声が廊下に響いた。今日はよく呼ばれる日である。

「どうした」
「シュナイゼルお兄様がルルーシュを呼んでるの」
「兄上が?」
「それとスザクも」
「えっ、僕?」

 どういうことだと眉をひそめる。俺だけでなくスザクも呼んでいるところに不穏なものを感じるな、と警戒した。

「まさか悪い話じゃないだろうな。スザク、お前何か粗相をしていないか」
「ええっ、僕、何もしてないよ!」
「考え過ぎよ。二人に話があるから呼んでおいでって、むしろ上機嫌だったわ」
「兄上の上機嫌というのが嫌な予感を増すな……」
「とにかく早く! 社長室!」

 今度はユーフェミアに背中をぐいぐい押される。仕方ないと溜め息をつき、スザクを目線で促すと社長室に向かった。

「俺ひとりならともかく、お前も一緒なのが怪しすぎる。考えられる話としては全部で三十六通りの……」
「気にしすぎだって」
「お前は兄上の恐ろしさを知らないからのん気でいられるんだ」
「社長の怖さはまだ実感してないけど、大丈夫だよ。だってルルーシュが一緒なんだから」

 全幅の信頼を寄せられ、ルルーシュの中で庇護欲のようなものがかき立てられた。何があってもスザクだけは守らなければと密かに決心し、社長室のドアをノックする。

「やあ、レッスン前に呼び出して悪いね」
「いえ」

 社長の椅子に座り、机に両肘をついたシュナイゼルはユフィの言っていた通り、上機嫌だ。にこにことした笑顔がかえってルルーシュの警戒心を煽る。

「何かお話ですか」
「ルルーシュはせっかちだね。最近は私も忙しくて君とゆっくり語らう時間がないから、まずは世間話でもしようじゃないか」
「スザクはこのあとレッスンですので、お話があるのなら早くお願いします」
「まったく、兄弟多しといえども私にそんな口がきけるのはルルーシュぐらいだよ」
「褒め言葉として受け取っておきます」

 会話だけを聞いていれば極めて不穏だが、これが日常茶飯事なのでルルーシュもシュナイゼルも気にしていない。おろおろするのはスザクひとりである。

「仕方ないね。では、早速本題に入るとしよう」

 座りなさいと促されてソファに腰掛ける。シュナイゼルも向かいに座り、ルルーシュとスザクを交互に見た。

「新しいアイドルユニットを作ることになった。そのメンバーにスザク君を選びたい」

 突然の発表にすぐには反応を返せなかった。シュナイゼルは楽しそうに笑みを深めた。

「アイドルユニットは今までうちになかったから新しい試みだが、スザク君ならきっと大丈夫だと信じている。やってくれるだろう?」
「あ……、は、はい! もちろんです!」
「アイドルと言っても、私は若い女の子に声援を送られるだけの存在にはしたくない。老若男女に認知され、人気実力ともにトップクラスのユニットにしたいんだ。歌もダンスも芝居もできるアイドルだよ」
「でも、僕はまだ芝居が下手で……」
「デビューは半年後を目標としている。その間、今まで以上にレッスンに励んでもらうよ」
「わかりました。頑張ります」
「良かったなスザク、やっとデビューできるな」

 我が事のように喜んでいると、「君もだよ」と意味不明な声が飛んできた。

「スザクのマネージャーになれということですか? それでしたら特に問題は、」
「マネージャーじゃない。君もユニットの一員としてスザク君と一緒にやっていくんだ」

 顔だけを向けたままルルーシュは固まった。異母兄の言葉が理解できない。

「……は?」
「テレビ局の関係者からルルーシュをぜひ使いたいという声が多いのは知っているだろう? 事務所スタッフがここまで望まれるのは異例のことだよ。今までは本人のやる気がないからと断ってきたが、スザク君とならばきっと良いユニットになる。君たちのこれまでの四ヶ月間を見てきての私の判断だ」
「判断って……そんなこと勝手に決めないでください! 俺はアイドルにも芸能人にもなるつもりはありません! スタッフは単なるアルバイトだし、本気でスターを目指しているスザクの隣に立つなんて…!」
「スザク君が本気だからこそ、君も本気で頑張ってみないかと提案しているんだ」
「俺は今までのスザクの頑張りを知っています。スザクは確かに努力してきた。でも、俺は何もしていない。こんな人間が隣に立つのはスザクに対して失礼です」
「だったら、スザク君に失礼のないようにすればいいだけじゃないかな」
「簡単に言わないでください! 歌も踊りもやったことないんですよ!」
「だから半年の猶予を与えている」
「無茶言わないでください! 俺は素人だ!」
「誰だって最初は素人だよ」
「そういう問題ではなくて、」
「でも、ルルーシュは演技の才能があると思います」

 ふいに聞こえた声に言葉を飲み込む。隣を見れば、スザクが慌てたような顔をしていた。

「す、すみません、勝手に会話に入ってしまって……」
「いや、これはお前に関わる話だ。お前だって俺みたいな中途半端な人間とユニットを組むのは嫌だろう? アイドルユニットなら適任者はほかにもいる。同期だって大勢いるんだから、その中から相応しい者を」
「僕はルルーシュがいい」

 真っ直ぐ告げられ、ルルーシュは一瞬反応を忘れた。

「社長の命令だからじゃない。僕はルルーシュがいい。ルルーシュと一緒にやりたいし、一緒にトップを目指したい」
「な……、む、無理だ! 無理に決まっている! 俺は絶対にやらない!」
「絶対に?」

 悲しそうに首を傾げたスザクは捨てられた子犬のようで、思わず言葉に詰まった。が、ここで絆されるわけにはいかないと目線を強くした。
 スザクはデビューの話に舞い上がっているだけだ。デビューできるならメンバーは誰でもいいと簡単に考えているのだ。そうではないとどうやって説得しようか考えていると、栗色の髪がルルーシュの視線より下になった。
 スザクに頭を下げられているのだと気付いたのは三秒後のことである。

「お願いします。僕はルルーシュがいい。ルルーシュが嫌だと言うのならこのデビューの話も断る」
「ば…っ、馬鹿なことを言うな! せっかくのデビューの機会を無駄にするんじゃない!」
「じゃあ一緒にユニット組んでくれる?」
「それとこれとは……」
「演技の才能があるって言ったのは本当だよ。たまに僕に付き合って一緒にレッスンを受けてくれるだろ? それを見ていて思ったんだ。歌と踊りはルルーシュらしさが出ていて、それはそれでいいと思うし」

 つまり、遠回しに下手だと言っているんじゃないかと頬を膨らませれば、スザクが「大丈夫だって」と笑った。

「僕の苦手なところはルルーシュがフォローして、ルルーシュの苦手なところは僕がフォローすればいいんだ。もちろん、演技も歌ももっと上手くなれるように努力するけど、その努力はひとりじゃなくてルルーシュと一緒がいい。――僕と二人で、夢を叶えてくれませんか」

 ルルーシュの前に右手が伸ばされる。
 なんだそのプロポーズみたいな言葉はと思ったけれど、不思議と口元には笑みが浮かんでいた。
 (こんな風に言われて断われるわけがないだろ、馬鹿)
 絶対やらないと宣言したばかりなのに、もう前言撤回だ。仕方がない、絆されてやるかと小さく息を吐く。

「――そうだな、お前と二人ならやれないことはない気がする」
「じゃあ…!」
「と言っても、正直なところ、現時点ではまったく自信がない。事務所の力とコネだけで生き残れるほど甘い業界じゃないことはこの半年で身に染みた。だが、事務所の力とコネもまた運で、その運は実力のうちだということも知っている。お前とユニットを組むのなら、俺はこの世界のトップを目指したい。だから、死ぬほどレッスンするぞ」

 柔和だったスザクのまなざしに力強い光が宿る。
 彼にはスターとしての素質があると、今このときになってルルーシュは気付いた。背筋が震えたのは、スザクと手を取り合える運命の喜びを感じたからだ。

「よろしくね、ルルーシュ」
「ああ、よろしくスザク」

 固く握手を交わし合う。お互いの目を見て頬を緩めた。

「決まりだね。君たちには明日から特別レッスンを受けてもらう。きついとは思うけど、覚悟はできているね?」

 シュナイゼルの声に、ルルーシュとスザクは揃って「はい!」と応えた。
 これが、のちに奇跡の二人と呼ばれるアイドルユニット誕生の瞬間だった。
 (16.05.01)