Last Letter 7

 なぁ、スザク。
 本当のことを知ったらお前は怒るのかな。
 初めてのキスのことも。
 突然抱き締められたその意味も。
 お前が一晩中、俺の部屋の前にいたことも。
 お前が俺を好きだったことも。
 本当は全部知っていたと言ったら、お前は怒るのかな。
 知っていて知らないふりをし続けた俺は、きっと誰よりも卑怯なのだろう。
 知っていて何ひとつ応えることのなかった俺は、きっと誰よりも残酷なのだろう。
 俺への想いなんて、俺がいなくなったあとまでお前に引きずってもらいたくなかったと言えば、それは自意識過剰で傲慢すぎるだろうか。
 それでもいいから何か残して欲しかったとお前は言うだろうか。
 わかっている。これは俺の我が侭なんだ。
 どうしようもない我が侭。
 嘘をついたわけではない。ただ、俺たちには必要のないことだったから隠しただけで。
 それはお前も同じだろう?
 結局、最期の最期まで俺たちはすれ違ってばかりだったのかもしれないな。
 でもそれは、ある意味とても俺たちらしいと思わないか?
 スザク。
 俺はお前に生きていて欲しかったんだ。
 これから先の未来は、お前にとってはつらいだけのものになるのかもしれない。それをわかっていてお前にすべてを押し付けて、それでも生きて欲しいなどと思うのは本当に身勝手だとわかっている。
 だけど、俺はお前に生きていて欲しいんだ。
 お前がこの世界からいなくなると思うだけで絶望してしまうほどに、お前のことを愛していたよ。
 だから生きて欲しかった。
 これも俺の我が侭だ。
 俺の我が侭で振り回してしまい、お前には申し訳ないと思っている。
 俺のことを忘れてくれとは言わない。
 忘れないでくれとも言わない。
 ただ、お前のこれからの人生の中で、ほんの一瞬でも俺を思い出してくれることがあるのなら、その思い出が少しでも温かいものであるのなら、それはとても幸いなことだと思う。
 こんな話を全部聞いたら、やっぱりお前は怒るのかな。
 これは悲劇なんかじゃない。
 今日という日は、新しい世界の始まりとなる。
 輝ける始まりの日だ。
 お前にとっては長くつらい道のりになるだろう。
 だけど、お前には明日がある。
 今日より良くなるかもしれない明日が、お前にはある。
 生きている限り、不変なものなんてない。俺は数十年先のことを考えて計画を立てたが、人の世界に絶対がないことは俺自身がよく知っている。
 ただひとつだけ確かなのは、お前もナナリーも皆も、それぞれの人生をそれぞれの足で生きていくということ。それぞれの明日を迎えられるということ。
 それは俺が創りたかった世界そのものだ。
 自分自身にも嘘をつき、だけど諦められず、ひたすらもがき続けてきた俺が、自分の納得のいく生き方をし、最後に自分の望みを叶えられるということはとても幸福なのだと思う。
 なぁ、スザク。
 子どものころ、お前は言ってくれたよな。
 “俺がルルーシュを皇帝にしてやる”って。
 お前はちゃんと約束を守ってくれた。俺はお前の言った通りに皇帝になった。
 だから今度は俺の番だ。
 あのときは最後まで言葉にできなかったけれど、本当は俺はこう言いたかったんだ。
 “僕はスザクを英雄にしてやる”って。
 お前は俺にとってはヒーローだったから。
 お前には英雄という名が何よりも相応しいと思うから。
 裏切りの騎士なんて名前よりよっぽど似合いだと思うから。
 だからスザク。
 俺がお前を英雄にしてやる。
 本物の英雄に。
 ああ、もう時間だ。
 行かないと。
 お前が待っている。
 ありがとう。お前に出会えて良かったよ。
 直接声に出して伝えることは永遠にできなくなってしまったけれど、ずっと伝えたくて、でも伝えられなかった言葉を、許されるならばお前に贈りたい。
 愛しているよ。
 スザク。
 END
 (09.05.20)