※『極上の口溶けを』の続きです。
俺がまだ子供だった頃、嫌なことがあるとアリエスの離宮をこっそり抜け出し、馬に乗って近くの森までお忍びで行っていた。
馬で遠出したときに偶然見つけた場所で、森といってもそれほど奥深いところではなかった。アリエスの離宮の警備範囲内にギリギリ入っていたから不審者に遭遇する心配はなく、滅多に人もやって来ない。だから、ひとりになりたいときはそこへ良く逃げ出した。
嫌なことの内容は様々だ。俺を庶民の子と嘲笑う声だったり、貴族の嫌がらせだったり、その嫌がらせで妹のナナリーを泣かせてしまった己の不甲斐なさだったり、誰か頼らなければ妹ひとり守れない自分の非力さだったり、挙げたらキリがない。
俺よりさらに小さかったナナリーは母に色んなことを報告していたけれど、俺は何も言えなかった。元ラウンズの母の息子として、たとえ家族であろうと、いや、最愛の家族だからこそ弱いところを見せるのは嫌だったのだ。
そうしてひとりになった場所で、俺は人知れず泣いていた。泣くだけならば自分の部屋でも変わらないのに、アリエスの中にいる間は決して泣かないというのが自分なりのプライドだった。
その日も護衛達の目を盗んで離宮を飛び出し、近くの木に馬を繋ぐと上等な服が汚れることも厭わずいつもの草むらに座り込んだ。昼間、皇宮で耳にした心無い言葉を思い出すと涙がじわりと滲み、俺は自分を守るようにぎゅっと膝を抱き締めた。
俺達への陰口は日常茶飯事である。彼らは俺が目の前にいてもわざと聞こえるように話し、こちらの反応を見て楽しんでいる。人の噂や悪口を生きがいにするつまらない連中だ。いちいち腹を立てるのは無駄なことだとわかっている。だけど悔しいものは悔しかった。
今日は幼いナナリーを侮辱する言葉だった。将来は政略結婚の道具として役に立ってもらわなければとか、庶民の子でも皇族は皇族だから相手は喜ぶだろうとか、あれではもらったほうも困るから遠い外国の猿にでもやればいいとか、いつにも増して酷い言葉の数々に怒りが湧いた。
まだ七歳のナナリーは政略結婚の意味を理解しておらず、不思議そうな様子できょとんとしていた。「外国のお猿さんはブリタニアのお猿さんとは違うのですか?」と無邪気に尋ねられたことがさらに胸に詰まった。
俺は小さな手を引いて逃げるようにその場を離れた。意味がわかっていなかったとしても、あれ以上ナナリーの耳に下品な言葉を聞かせたくなかった。背後からの嘲笑は逃げる俺を囃し立てるみたいだった。
抱え込んだ膝に顔を埋めてじっと蹲る。こうしていると自分だけの世界に閉じこもることができた。嫌な出来事もほんの少しだけ遠ざかるようだ。
(あんな連中に笑われないようにもっと強くならないと)
兄や姉みたいに皇族として堂々と振る舞い、何を言われても鼻で笑えるように。つまらない陰口を叩かれないように。母に隠れてびくびくするばかりではなく、自分の足でしっかり立てるように。ナナリーを守れるように。もっともっと強くならなければ。
不意に小枝の折れる音がした。
動物でもいたのかと首を回した俺は、そこに見慣れない人間がいることに気付いて息を呑んだ。
軍人の格好をしている。見た限り高位の軍人ではない。きっと下級兵だ。しかも外国人。肌の色は俺と違うし、顔立ちはやけに幼く、俺と同い年だと言われても納得してしまう。だけど背の高さから考えると十代半ば、あるいはもっと上の年齢かもしれない。
どうしてこんな場所にこんな者がいるのだろうと不思議に思い、ある単語が俺の脳裏に浮かんだ。
誘拐犯。
ひとりで離宮を抜け出したことを初めて後悔した。警備範囲内だからと安心していたのが良くなかった。誘拐犯や暗殺犯はたとえ城の中だろうと狙ってくるのだということをすっかり忘れていた。
俺は泣いていたことも忘れて腰を上げ、誘拐犯から逃げるために駆け出した。とにかく距離を取って、アリエスの人間がいるところまで逃げよう。近くに馬を置いているにもかかわらず、その一心で足を動かした。
「ぅわ……っ!」
が、五メートルも進まないうちに草に足を取られて無様に転んだ。打ち付けた膝が痛い。捻ってはいないようだけれど、思い切り転んだので足がじんじんする。
「大丈夫?」
そこへ男の声がした。恐る恐る顔を上げれば、誘拐犯が俺を覗き込んでいた。
「思いきり転んじゃったね。痛むところはない? 立てる?」
相手をまじまじと見ていたら、彼はしきりに大丈夫かと尋ねてきた。その声音は優しく、本気で俺を心配してくれているのだとわかった。
少なくとも悪い人間には感じられない。それとも優しいふりをしているだけなのか。こちらを安心させて信用したところで連れ去るつもりなのか。
転んだ衝撃と身体を打った痛みで相手への警戒心がぐらぐらと揺らぐ。
「……痛い」
「どこ? ちょっと見せて」
俺を大事そうに抱き上げてその場に座らせると念入りに調べられた。
「血は出てないけど、捻ってる可能性もあるか……」
彼が知らない国の言葉を呟く。馴染みのない外国語だ。皇族なので他国の言葉も学んでいるけれど、その音は今まで一度も耳にしたことのないもので興味が湧いた。
「靴、脱がしてもいい?」
今度はブリタニア語だった。さっきの言葉はもう聞けないのかと少し残念に感じながらこくりと頷く。
ありがとうと答えた彼は、俺の靴を脱がせるとズボンの裾を捲って足首に触れた。手付きはやはり優しく、細心の注意を払っている。足首を前後に動かしたり、立って歩いてみたり、色々と確認したあとでまた草の上に座らされた。
「捻ってなさそうだし、特に怪我もしていないから大丈夫だよ。でも家に戻ったらお父さんかお母さんに転んだことを話して、一応ちゃんと診てもらったほうがいいかな。万が一ってこともあるからね。僕は医者じゃないから正確な診断を出せないし、足の怪我は甘く見たらあとで大変なことになる」
ひとりで帰れる? と聞かれてアリエスの離宮を頭に浮かべた。すると今日の出来事が蘇り、それと共にアリエスで待っているであろうナナリーや母の姿が思い出された。
「う……っ」
気付いたときには泣いていた。十歳にもなって子供っぽいと思ったけれど涙が止まらなかった。見知らぬ他人、それも外国人の下級兵の前で泣くなんて恥ずかしい。
わんわん泣く俺に彼はすっかり困り果てた様子だった。だけどおもむろに俺の頭を撫で、ぎゅっと抱き締めてくれた。
他人の体温だ。どこの誰かも知らない、たった今、出会ったばかりの人のぬくもりがひどく安心できて、俺は泣きながら彼の軍服を強く握った。ぽんぽんと軽く背中を叩かれ、彼の胸元に顔を押し付ける。
それからどれほど泣き続けたのかわからない。泣くことに疲れて息を整えていると、また彼に頭を撫でられた。家族は俺のプライドを思って子供扱いしないし、身内以外で皇子の俺に気安く触れる人間はいない。赤の他人からこういう風に撫でてもらうのは生まれて初めてだと気付き、不思議な心地がした。
胸が温かく、ふわふわとして身体が浮かぶような気分。雲に乗ったらこんな感じだろうかと考え、子供らしい発想をしている自分が可笑しくなった。
「もう泣きやんだ?」
彼が顔を覗き込み、ポケットから取り出したハンカチで頬を拭われる。
「子供扱いするな」
バツの悪さから素っ気ない言葉を投げれば、彼が可笑しそうに肩を揺らした。
「君は子供じゃないか」
「子供じゃない」
「今、何歳?」
「十歳」
「じゃあ子供だ」
そう言って彼が俺の髪を整える。むっとした顔を向けてみせるけれど、彼の顔は笑ったままだった。
「子供が子供らしくいられるのはいいことだよ。それに早く大人になる必要はないと思うな」
「でも、僕は早く大人になって強くならないと」
「どうして?」
その質問に答えてやる義理はなかった。相手はただの下級兵だ。こちらの正体に気付かれたら後々面倒なことになるかもしれない。
一方で、どうせバレることはないと高をくくっていた。皇族といえども成人するまでは公に顔を出すことはない。役職を得れば別だが、当時十歳の俺にそんな可能性は欠片ほどもなかった。だから貴族でもない外国人の彼が俺の顔を知るはずはないし、名乗ったところですぐに忘れるだろう。
それに彼には話してもいいような気がした。普段の俺ならばリスクを考えて口を噤んだだろう。だけど、もし彼がこの話をネタに俺を強請ることがあったとしても、それは俺の見る目がなかっただけだと思えるほどには初対面の下級兵をなぜか信頼していた。
「――守りたいから」
「何を?」
「ナナリーを……妹を守りたいから。どんな奴が相手でも負けないように僕は強くなりたい。ううん、ならなきゃいけないんだ」
幼い子供の決意を彼は笑わなかった。そっか、と優しく答えてまた頭を撫でる。
「強くなりたいと思うのは悪いことじゃないよ。僕だってもっと強くなりたいと思うから。だから強くなるための努力を惜しむ必要はないし、一生懸命頑張ることだって大切だ。でも、たまには大人に甘えたり頼ったりしても許されると思うよ」
「大人なんかには頼れない」
「どうして?」
「周りの大人は敵だらけだ。隙を見せたらすぐに足を掬われる。だったら僕が強くなるしかない。……けど、あなたは嫌な大人じゃないと思う」
ぼそぼそと伝えて顔を横に向けた。
出会ってまだ十分程度の、どこの誰かも知らない相手。でも、転んだ子供を抱き起こしてくれたのは紛れもなく事実だ。
皇宮にそんな大人はひとりもいない。俺やナナリーが目の前で転んだとしても、助けるどころかいい気味だと笑うのがせいぜいだろう。だからこそ彼の親切が俺の目にはとても新鮮に映った。
「どういたしまして」
彼の笑う気配がした。俺は照れくささを誤魔化すように服に付いた土を払った。
「それよりなんでこんなところにいるんですか。軍事訓練をやっているわけではないでしょう?」
相手は自分より年上なのだと思い出し、今さらながらに口調を改めた。
人前で大泣きしてしまった気恥ずかしさですっかり忘れていたけれど、ここはアリエスの敷地に近い場所だ。下級兵と思われる人間がうろつける場所ではない。まさか本当に不審人物かと疑念を抱く。
「僕が軍人だってわかるの?」
「軍服を着ているんだからわかるに決まっています。軍人じゃなかったらむしろ問題です」
「ああそっか、そうだよね。うん、見てのとおり僕は軍人。上司からの頼まれ事の帰りだったんだけど、この辺まで来ることは滅多にないから珍しくて、帰りは行きと違う道を通ってみたんだ。そしたら……」
「まさか迷ったんですか」
「だって地図も何もなくて。君、道わかるかな? わからなかったら誰か大人の人を紹介してもらえると助かるんだけど」
彼の顔をじっと見たあと、溜め息をひとつ零した。下手な言い訳かと疑ったが、困っている様子はどうやら本物らしい。
「携帯で地図を確認すればいいじゃないですか」
すると彼が困ったような顔で「携帯は持ってないんだ」と言った。どうしてと尋ねそうになり、彼は外国人なのだと思い至る。
先ほどの外国語を踏まえると、少なくともこの土地で生まれ育ってはいないだろう。となれば恐らく彼は名誉ブリタニア人だ。
名誉ブリタニア人になると外国出身者でもブリタニア人として扱われる。それが表向きの制度だ。
しかし、権利や自由は生粋のブリタニア人に比べて大きく制限されていた。端末がそのひとつで、名誉ブリタニア人は携帯電話を所持することができない。情報漏洩やスパイ活動を警戒しての措置だが、要するに名誉ブリタニア人は信用に値しないということだ。
彼らに対する差別意識も根強く、名誉ブリタニア人は本国でもエリアと呼ばれる植民地でも酷い扱いを受けているのが実情である。そういうブリタニアの真実を皇子にわざわざ進言する臣下はいないけれど、ブリタニアという国のあり方に興味を持って調べていたらこの世界の不条理を知ることとなった。
(この軍人もそういう不条理の中で生きているんだろうな)
なぜブリタニア本国にいるのか。なぜブリタニア軍人になったのか。出会ったばかりの彼がどういう事情を抱えているのかは知らない。選択したのは彼自身で、俺が同情するのはお門違いというものだろう。ただ、皇子のくせに何もできない自分が役立たずのように感じられた。
「だったら紙の地図を持ってくれば良かったのに」
「あ、なるほど。君って頭いいね」
「別に頭は使っていません。普通のことです」
せめて周辺地図ぐらいは持ってくるべきだし、地図がないのならば行きとは違う道を選択すべきではない。俺に出会わなかったらどうするつもりだったのだろう。
「仕方ないですね。目的地はどこですか」
場所を聞き出し、ポケットから取り出した携帯に現在地を表示する。彼が口にした施設はここからだいぶ離れたところにあった。通常は車を使うような距離で、聞き間違いかと三度も確認したくらいだ。
歩いて帰るつもりかと確かめれば、歩いて帰るつもりだよと当たり前のように返されたので唖然とした。
「人の足で? この距離を? 本気ですか?」
「大した距離じゃないよ。戦場じゃもっと歩くことも……とにかく大体の位置がわかれば大丈夫。ありがとう」
にこりと笑う顔を複雑な気持ちで眺める。
戦場ではもっと歩く、と言いかけて彼は口を閉ざした。子供の俺に聞かせる話ではないと思ったのだろう。
一見すると虫すら殺せないようなタイプに見えるが、下級兵だろうと軍人は軍人だ。戦場という単語がさらりと出てきたということは何度も戦いに出たことがあるに違いない。そして、言葉では語れない経験をたくさんしてきたのだろう。離宮でぬくぬくと過ごしている俺には想像もできないような経験を。
『僕だってもっと強くなりたいと思うから』
俺に語りかけてくれた言葉を思い返す。あの言葉は彼自身の本心だったのかもしれない。
「とにかく足のほうはお医者さんに一度診てもらったほうがいいね。ひとりで帰れる? 歩けそうにないなら家までおんぶしてあげるけど」
「おんぶとは?」
「おんぶっていうのは、僕の背中に君を背負うってこと」
その姿を想像し、ふるふると首を横に振った。
「歩けるから大丈夫です!」
「そう? 無理しなくていいよ」
「無理なんかしていません。馬があるからひとりで戻れます。とにかく大丈夫です」
背負われているところを誰かに見られたらいい笑いものだ。第一、下級兵の彼が皇族の俺を連れ歩いていたらどんな疑いをかけられるかわからなかった。たまたま知り合ったという説明が通用するとは思えないし、最悪、皇子の誘拐犯として処刑される可能性だってある。
過剰な心配かもしれないが、そういうことが現実に起こり得るのがブリタニアという国だ。偶然出会い、転んだところを親切にも助けてくれた人を面倒なことに巻き込みたくない。
何より俺の正体を彼に知られたくないと思った。アリエスに行けば俺がブリタニアの皇子だとバレてしまう。それは嫌だった。
だって、俺は虐げている側の人間だ。彼を戦場に行かせ、人殺しを命じている側の人間だ。ブリタニア皇帝の息子だ。
名誉ブリタニア人の彼は皇帝を憎んでいるだろう。皇帝の血縁者のこともきっと憎んでいる。俺が皇子だとわかれば優しい笑顔は消え、ブリタニア軍人として膝をつき、心の中で俺のことを罵りながら頭を下げるのだ。そんな場面は見たくないと思った。俺のエゴでしかないけれど、彼と別れるまではただの子供のままでいたかった。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だって言ってるじゃないですか。心配性ですね」
無理やり立ち上がると足首が少し痛んだけれど、眉を寄せてやり過ごす。
「じゃあせめて馬がいるところまで。どこに繋いでるの?」
いいと言っているのにまだ世話を焼いてくる。なんてお人好しなのだろう。
あっちですと指させば、わかったと返した彼が俺の前でしゃがみ込んだ。何をするのかと見ていたら脇の下に手を入れられた。それからひょいっと抱え上げられる。
「わっ!」
「危ないから暴れないで」
彼の首に手を回してしがみ付く。この状態はいわゆる抱っこというものなのでは、と気付いたときには顔が熱くなっていた。
頭を撫でられることも抱っこをされることも、その頃の俺にはすっかり縁遠いものになっていたからすべてが照れくさい。もう子供じゃないと思うようになった子供にとって、子供扱いされることはたまらなく恥ずかしいものだ。でも、やっぱり嫌ではなかった。
回した両手にぎゅっと力を込めれば、俺を安心させるように背中をさすられた。しばらく行くと馬の気配がした。はい到着、と鞍に下ろされたときはもう終わりなのかと残念に感じたほどである。
「ここから先はひとりで行けるね?」
「はい。――あの」
また会えますか。
そう尋ねようとして口を噤んだ。また会えば今度こそ俺が皇子だと知られてしまう。正体がバレるのは嫌だと思ったばかりなのに、また会いたいと言い出すのはどうかしているだろう。
俺は皇子で、彼は名誉ブリタニア人の軍人。名誉ブリタニア人に出世の道はなく、仮に彼が功績を挙げたとしても俺と顔を合わせるほどの地位に就くことは限りなくゼロに近い。
だから、これが最初で最後。
困っているところを親切な軍人に助けてもらった。ただそれだけのことだ。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。今度は転ばないようにね」
「もう転びません」
むっとすると彼が頬を緩めた。まったく、と零してから俺も笑顔を浮かべる。
「気を付けてね」
「はい。それじゃあ」
後ろ髪を引かれる思いで馬を走らせる。彼が俺を見送っているのはわかったけれど、後ろは振り返らなかった。
子供時代の些細な出来事。次の日には忘れてしまうような他愛ないやり取り。彼とはそれで終わりのはずだった。
思いがけず再会したのは二年後。場所はアリエスの離宮である。
十二歳になった俺に、周囲は騎士を持てとうるさかった。第十一皇子は優秀との評判が立つようになり、力のある兄姉からも目をかけられていることから嫌がらせが増え、何度か暗殺未遂にも巻き込まれたことが原因だが俺はちっとも乗り気ではなかった。
皇族の騎士と言えばブリタニア国内ではかなりのステータスだ。野心を持つ者ならば是が非でも手に入れたいと願う地位のひとつである。つまり、そういう連中にとって俺のような皇子は都合の良い踏み台というわけだ。
俺だって信頼も何もない相手に命を預けたいとは思わない。だから頑なに拒絶していたのだが、ある朝いきなり「今日はあなたの騎士を選んでもらうわよ」と母に宣言され、無理やり連れて行かれた先で騎士候補達と対面することとなった。
勝手すぎると憤慨していた俺は、候補者の中に懐かしい顔を見つけて息を呑んだ。そこにいたのは森で出会い、転んだ俺を助けてくれた彼だった。
あれから二年が経ったものの、童顔の彼はほかの候補に比べるとやはり幼く見えた。リストの経歴に目を落とし、彼の名と年齢を初めて知った。
名乗ることなく別れた相手は枢木スザクという名前だった。推測したとおり彼は名誉ブリタニア人で、十歳のときにブリタニアに渡ったことや特派と呼ばれる組織に属していることが記されていた。
特別派遣嚮導技術部、通称特派は異母兄シュナイゼルの直属だ。兄の部下である彼がなぜ俺の騎士候補にと訝り、思わず母を見上げた。母はにっこり笑うだけで俺の疑問に答えるつもりはなさそうな様子である。
「さ、この中からあなたの騎士を選びなさい」
それは確認ではなく命令だった。すぐに選べるものかと文句が出かかったけれど、俺は溜め息を飲み込んで全員の経歴に目を通した。
貴族出身者がずらりと並ぶ中、名誉ブリタニア人の彼は異質な存在だ。戦果は素晴らしく能力も充分足りるものの、騎士候補としては明らかに浮いている。
普通に考えればただの数合わせ。皇族は名誉ブリタニア人を受け入れているというポーズのための道具。そんなところだろう。
「――誰を選んでも文句は言いませんね」
母に問いかければ、赤い口紅を塗った唇が弧を描いた。
「当たり前じゃないの。専任騎士は皇族の特権。たとえ皇帝陛下であろうと文句は言えないわ」
「今の言葉、絶対ですよ」
「私は約束をちゃんと守る母親よ。で、誰にするか決まったの?」
「ええ。僕が騎士にしたいのは――」
***
俺とスザクの出会いは五年前。でも本当はそのさらに二年前、たった一度だけ会っていた。だから本当の出会いは七年前なのだという事実を俺はいまだに口にできないでいる。
スザクを騎士に選んだのは俺の我儘だ。
雑種と呼ばれて蔑まれている皇子の騎士になるということは、それだけで大きな苦労と面倒を背負うということになる。
しかもスザクは名誉ブリタニア人。前例がなく、通常は有り得ない選択に人々は驚愕した。雑種の皇子に奴隷の騎士はなんとも似合いだとか、下等な者同士でくっ付くのは滑稽だとか、くだらない陰口は何度も耳にしてきた。
それでもスザクは嫌な顔ひとつせず、俺の騎士として立派に働いてくれている。騎士としての彼に不満はない。ただ、ときどき少し寂しくなるだけだ。
俺達が七年前に出会っていたことをスザクはきっと覚えていないだろう。その証拠に、彼が騎士となってから五年が経つけれど、森で会ったことは一度も話題になったことがない。当たり前だ。話をしたのはあの一度きりだし、七年も昔のことである。
第一、俺は名乗らなかった。たとえ顔に見覚えがあったとしても、まさかあのときの子供が皇子だったとは夢にも思わないだろう。だからスザクの反応は当たり前で、寂しいと思うこと自体が間違っていると理性では理解していた。我儘で彼を騎士にしておきながら勝手な言い分だ。
でも、スザクにとっての俺は大した存在ではないのだと思い知るようで感情が納得してくれない。彼を好きだと自覚してからは寂しさが大きくなり、自分でもどうしようもなかった。
こんなことではいけないのにな、と息を吐き出す。手にした書類を揃え、角を合わせて閉じようとしたところで目の前にミレイの顔がいきなり現れた。
「大きな溜め息」
「っ、驚かせないでください!」
「呼んだのにぼーっとしているルルーシュが悪いんじゃない」
「作業に集中していただけです」
「ほんとに?」
「本当ですから邪魔しないでください。大体、会長のせいで休日対応しているんですよ」
日曜日の午後。本来ならば自室でのんびり本でも読んでいるのに、ずぼらな生徒会長のせいでメンバー全員が朝から登校する羽目になったのだ。睨むように見れば、ミレイがテーブルにもたれかかった。
「ルルーシュのおかげでだいぶ片付いたから感謝してるのよ」
「だったら遊んでないで手伝ってください」
「まあいいじゃない。一旦休憩しましょうよ」
「会長」
「はーい、みんな休憩。座りっぱなしだったからちょっと身体を動かさない?」
ミレイが手を叩くとほかのメンバーが不思議そうに顔を上げた。
「何するつもりですか」
嫌な予感がして質問する。ミレイがにっこり笑い、嫌な予感が増した。
「今日は日曜日だけど、部活生は結構出てきてるのよね。寮生は寮にいるし。なので、ゲームをしたいと思います」
「ゲーム? まさか鬼ごっこでもするつもりですか?」
冗談っぽく言ったリヴァルに、ご名答、とミレイの笑みが深まった。
「今から鬼ごっこをやるわね」
この場にいる全員が「えっ」と引き攣ったような声を出す。止める間もなくミレイが校内放送のスイッチをオンにした。
『生徒会長ミレイ・アッシュフォードから臨時アナウンスです。これから全校一斉鬼ごっこを始めます。参加は自由。部活生も寮生も参加できる人は参加してちょうだい。捕まえる相手は我がアッシュフォード学園高等部の副会長、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下! 見事副会長を捕まえた人には景品として四つの権利の中から一つが選べます。その一、副会長と一日付き合える権利。その二、生徒会メンバーから好きなところにキスしてもらえる権利。その三、部費を三倍にする権利。その四、寮の食事券一ヶ月分の権利。どれでも好きなのを選んでね』
生徒会メンバーから非難の声が上がる。ミレイは意に介することなく放送を続けた。
『では、一分後にスタートよ。タイムリミットは三十分後の午後四時。これを機に愛しの殿下に触るも良し、抱き付くも良し、好きにやっちゃいなさい!』
校内から黄色い悲鳴や雄叫びのようなものが聞こえ、俺は椅子から勢いよく立ち上がった。
「会長……」
「ほら、早く逃げないと捕まるわよ。ルルーシュ以外のみんなは生徒達を妨害してね。じゃないと誰かとキスすることになるかもしれないから」
「キスなんて冗談じゃありませんよ!」
「もう、勝手に決めないでください!」
メンバー全員がミレイに詰め寄る。その様子を一瞥した俺は、舌打ちすると生徒会室の窓に駆け寄った。文句は山ほどあるけれど、今は逃げることが最優先だ。
「スザク!」
二階から大声で呼ぶと、クラブハウスの玄関前で待機していたスザクがすぐに現れた。
「俺を逃がせ!」
ミレイのアナウンスを聞いて状況はきちんと理解しているのだろう。スザクは驚いたり戸惑ったりすることなく即座に反応した。
窓枠に足をかけて登り、俺は迷うことなく飛び降りた。浮遊感と重力に目を瞑った直後、しっかりと抱き留められた。恐る恐る瞼を上げれば、ほっとしたスザクの顔があった。
「あまり無茶はなさらないでください」
「緊急事態だ。それにお前ならちゃんと受け止めるだろう?」
「まったく……」
しっかり掴まっていてくださいと言うや否やスザクが走り出す。俺は横抱きにされた状態でスザクの首にしがみ付いた。
『鬼ごっこスタート! ちなみに副会長は騎士に抱えられてクラブハウスから西の方向に逃走したわよ! まずは全員で騎士を足止めすること!』
ミレイの奴、とまた舌打ちしたくなる。人を勝手に景品にして遊ぶなとあとで抗議しなければいけない。
「どちらに逃げますか?」
「お前に任せる」
「イエス、ユアハイネス」
いたぞ! という叫び声がし、目の前にラグビー部や柔道部の生徒達が立ち塞がった。その壁をスザクはなんなく飛び越えて走り続けた。ジェットコースターよりも酷い揺れに俺は耐えるしかなく、目と口を閉じて大人しく掴まっていた。
それからどれほど走ったのだろう。ようやく辺りが静かになった頃、ドアを開ける音がした。ここはどこだと現在地を確かめていたら、教室を突っ切ったスザクが棚のひとつを押した。すると隠し扉が現れ、別の教室と繋がった。
アッシュフォード学園には隠し通路や隠し部屋がいくつも存在する。万が一襲撃があった場合の対策だ。その数は多く、たまに場所が変更されているので俺も全容は把握していない。知っているのは学園の理事長と騎士であるスザクだけだ。
「ここは初めての場所だな」
「先日追加したばかりなので。あと十五分、こちらでご辛抱ください」
こうした隠し部屋は籠城に備えて最低限の設備も整っている。身を隠す場所としては最適だ。
恭しくソファに下ろされ、俺は疲れた息を吐き出した。
「もう二度とミレイの手伝いはしない」
「そのお言葉、何度目ですか?」
スザクがくすくす笑う。
「俺ばかりがこんな目に遭うのは理不尽だ」
「でも楽しいのではないですか?」
「これが楽しんでいるように見えるのか。とにかく時間まで休む。お前も座れ」
「しかし見張りは」
「たかが鬼ごっこに見張りなんて必要ない。いいから座れ」
では失礼します、とスザクが隣に腰かけた。二人分の体重にソファが沈む。さっきまでスザクの腕の中にいたんだよな、と思うと気恥ずかしいような感覚がして視線を横に向けた。
「すまないな、付き合わせてしまって」
「何をおっしゃっているのですか」
「だが、こんなお遊びのために……」
スザクは俺の騎士だ。だけど、鬼ごっこから逃がすために騎士になったわけではない。もっと崇高な理想と志があったはずなのに、学生の遊びに付き合わされて嫌気が差しているかもしれない。そう考えると申し訳なさでいっぱいになった。
「――ほかの皇族が良かったんじゃないか」
「ほかの皇族とは?」
「だから、俺なんかじゃなくてシュナイゼル兄上やコーネリア姉上のような立派で力もあって、いずれは皇帝にと期待されているような皇族の騎士が良かっただろう?」
胸の中に苦いものが広がる。母親の家柄が申し分なく、後ろ盾もしっかりしていて、周囲からもてはやされるような皇族ならばスザクの評価ももっと上がったに違いない。外れの皇子を引いたと後悔していたら、と考えるだけで悲しくなってきた。
「自分はルルーシュ殿下以外の方の騎士になるつもりも、なりたかったとも思いませんよ」
「慰めはいらない。俺に力がないのは事実だからな」
「殿下」
「最初からそうだったじゃないか。こんなのが皇子でがっかりしただろう? 今からでも遅くない、俺が推薦してやるからお前は兄上の」
「ルルーシュ殿下」
膝の上の手を握られる。顔を上げれば精悍な顔があった。出会ったときより随分と大人びていて、大人の男の顔だ。俺が子供扱いされるのは当然かと今さらながらに納得する。
卑屈になっている自覚はあった。だけど、いつかは言わなければいけないと思ってきたことだ。
スザクにはもっと相応しい場所がある。俺の隣ではなく、もっと彼の価値を高められるところに行くべきなのだ。
「ルルーシュ殿下の騎士になりたいと望んでここにいるのです。ほかの皇族のところに行けだなんておっしゃらないでください」
「だってお前は俺のことを知らなかったじゃないか」
思わず拗ねたような口調になっていて、バツの悪さからまた顔を逸らす。
俺の騎士になりたかったと適当な嘘をつくのはやめてほしい。俺の機嫌を取っているつもりかもしれないが、俺のことを覚えていなかったくせに期待を持たせるようなことは言ってほしくない。
「知っていますよ。あなたは悲しいことや悔しいことがあっても誰にも頼らず、おひとりで泣いているような強くていじらしい方だと」
言葉の意味がすぐには把握できず、俺はスザクの顔をぽかんと見上げた。
「どういう、意味だ」
ようやく出てきた声は自分でも驚くほどか細かった。こんなことで動揺している事実がみっともなくて思わず腰を上げかける。
しかし掴まれた手に力がこもり、俺の身体はソファに縫い付けられたように動けなくなった。
「森で出会った小さな子供のことを僕は忘れていませんよ」
思いがけない言葉に目を瞠るとスザクが表情を和らげた。
「なんで……お前は一度も……」
「殿下はお忍びでいらっしゃっていましたから、あの日のことは口にしないほうがいいと判断しました。それに下級兵だった自分のことは覚えていらっしゃらないだろうなと思って」
「そんなことはない! だって俺は……!」
嬉しかったのだ。
皇子とか皇族とか関係なく、純粋な好意だけで俺に優しくしてくれる人がいたことに救われた気がしたのだ。そんな人を忘れるはずがない。
「忘れるわけないだろう。会ったのは一度きりで名前も知らなかったけど、ずっと覚えていた。だからお前が騎士候補としてアリエスにやって来たときは嬉しかったし、お前だったら騎士にしてもいいと――、いや、騎士にするならスザクじゃないと嫌だと思った。お前に迷惑をかけるとわかっていても、俺は俺の我儘を通したんだ」
「迷惑なんてかけられていませんよ」
「さっきも言っただろう。俺には力がない。いつかはほかの連中を見返してやるつもりだが、今はまだお前を引き上げられるだけの力がないんだ。せっかくのお前の能力を生かすこともできず、ただ遊ばせているだけの俺に……」
スザクが俺を覚えていてくれたことは嬉しい。だけど、あのときと変わらない力のなさが情けなくなる。強くなりたいという言葉をまだ叶えられていない自分が不甲斐ない。
何もかもが歯痒くて、すまない、とぽつりと零した。謝られてもスザクだって困るだろう。やっぱり子供だと思われてしまう。
どうすればいいのかわからなくて俯いていると不意に抱き締められた。まるであの日のように。
「なんでも自分の力で乗り越えようとされるところは殿下の素晴らしいところですが、欠点でもありますね」
「欠点だと?」
「騎士としてはときどきでいいから甘えたり弱音を吐いたり頼ったりしていただきたいんです」
「甘えるって……」
「自分は殿下をお守りしたくて騎士になったのに、殿下がおひとりで悩みをすべて解決されたら騎士の出番がなくなってしまいます」
「お前はいつも俺を守ってくれているじゃないか。今日だってお前の出番しかなかっただろう?」
「そうなんですけど、そうではないというか」
何を言っていると肩を揺らす。至近距離に騎士の顔があって、俺はまじまじと眺めた。
始まりは憧憬に似た感情だったのかもしれない。スザクに対しては最初から好意しかなかったから、その好意をいつしか恋愛の『好き』だと勘違いしてしまったのかもしれない。
(勘違いだったとしても、今ここにある気持ちは本物だ)
好きなんだ。
声に出す代わりに心の中で伝える。スザクの両手が俺の頬を包み、柔らかくなぞった。その心地よさに自然と瞼を下ろす。
ずっとこうしていたい。スザクの側にいて、スザクに触れていたい。叶わない願いだと知っていても、この時間が永遠に続けばいいと思ってしまう。
「ルルーシュ殿下、僕はあなたのことが――」
そこへ校内放送が入った。がやがやとした周囲の雑音が流れたあと、ミレイの『残念ながらタイムアップ!』という声が響く。
『今回は副会長の勝利なので景品はなしです。というわけでルルちゃんは至急生徒会室まで戻るように』
勝手に始まった鬼ごっこが終了したようだ。やれやれとぼやいて立ち上がろうとした俺は、しかしスザクの腕の中に戻されてしまった。
「スザク?」
「殿下の勝利ということですが、自分は今こうして殿下を捕まえていますよね」
「お前は参加者じゃないだろう」
「騎士は参加するなとは言われていませんよ」
「俺がお前を呼んだのだからカウント外だ」
「自分は景品をいただく権利があると思うんです」
「お前、俺の話を」
「ですから生徒会が終わったら僕にお付き合いください」
「付き合うって何をだ」
「バレンタインのお返しです。今日はホワイトデーですから」
ホワイトデーという単語で少し考え、ああ、と思い出した。バレンタインデーにチョコレートを贈ったら「ホワイトデーにはお返しさせてくださいね」とスザクが言ったのだ。日本では三月十四日にバレンタインデーのお返しをするのが習慣らしい。
「俺が好きでやっていることだからお返しなんて必要ないのに」
「僕がやりたいんです。殿下のためにお茶のご用意をしていますから、僕の部屋で少しお時間をいただけませんか」
「それは構わないが……。だったらナナリーも誘ったほうがいいか?」
「いえ、今日は殿下のためのお茶ですので、できれば殿下と僕の二人きりで。ナナリー様とのお茶はまたの機会にしましょう」
俺のためと言われたら悪い気はしなかった。しかも場所はスザクの部屋だ。騎士の部屋に入ったことは何度もあるが、二人きりで一緒に過ごすのは初めてで自然と胸が高鳴った。
「し、仕方ないな。お前がそこまで言うのなら付き合ってやる」
本当は嬉しいくせに可愛くない言葉しか出てこない俺は意気地がない。何が楽しいのか、スザクはにこにこと笑っていた。
「そういえば、先ほどのはなんだったんだ? 俺のことがどうとか言っていなかったか」
「それはまたの機会にしておきます。今日は七年前のことを殿下が覚えていらっしゃったということがわかっただけで充分です」
「あまり昔の話は持ち出すな……」
泣いていたところを見られたのだと思ったら急に恥ずかしくなってきた。あの日のことをスザクは覚えていないと思い込んで悲しんでいたくせに勝手なものである。
「いいか、あれは俺とお前の秘密だからな。ほかの者には絶対に喋るなよ。特に母上とシュナイゼル兄上とミレイには」
「もちろんです。あの日のことは殿下と自分だけの秘密です」
二人だけの秘密というのはなんだかくすぐったい。照れくささを隠すように頷くと、今度こそスザクの腕を離れて隠し部屋を出る。
廊下には夕闇が迫りかけていた。今日の終わりを告げる時間帯は寂しく、なんだか心許ない。でも、スザクと別れる必要はないのだと思ったら不安はなかった。
「なあ、スザク」
ドアを閉めたスザクが俺を振り返った。
「お前にまた会えて良かった」
俺が皇子で、スザクが俺の騎士である限り、もう二度と別れなくていいのだ。それはとても安心できることだった。
「自分もです。殿下と出会えたことが自分にとっては一番の幸せです」
スザクが柔らかく微笑む。そうか、と答えて俺は顔を綻ばせた。
臣下としての言葉だとしても構わない。彼が俺の騎士になりたいと望んでくれたことは事実なのだから。
スザクは俺だけの騎士で、俺だけのものだ。これ以上を求めるのは欲張りというものだろう。
「では行くか」
騎士を伴って歩き出す。
彼の足音がついて来てくれることは何よりの幸せに感じられた。
(21.03.14)