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 ※「Last Letter」を先に読んだほうがわかる内容となっています。
 ルルーシュ。
 あれから世界は君の思うとおりになっているよ。
 まだ小さな争いや諍いは残っているけれど、それは人間が人間として生きていく上でどうしても避けて通れないものなのだろう。
 たとえば、家族という一番小さな集まりの中ですら、争いごとは絶えないのだから。
 だけど、それでも平和への道を世界は模索している。平和を目指そうと動き出している。
 少なくとも、支配と搾取だけしかなかったあのころとは違う。
 君の命と引き換えに手に入れた世界だ。
 不思議だね。
 今になって君のことがよくわかる気がするんだ。
 君の嘘も、涙も、悲しみも、強がりも、あのころは理解しきれていなかったのに、今になってすべてわかる気がするんだ。
 思えば出会ってから別れるまで、僕たちは擦れ違ってばかりだった。
 子どものときに君と別れてから、僕は君という理想を追い続けた。
 だけど、僕の理想だったはずの君はゼロで、僕は裏切られたと思った。
 君が僕の理想じゃないとわかってからは、君の存在を否定した。
 君が僕に嘘をついたことが何よりも許せなかった。
 殺してしまいたいほどに憎んだ。
 許せない。
 許したくない。
 ずっとそう思い続けてきた。
 結局、僕は心の底から君を憎むことはできなかったというのに。
 すべては無駄な足掻きだったんだ。
 本当の君に辿り着くまで、随分と遠回りをしてしまった。
 僕は知っている。
 あの薄汚く暗い土蔵の中で、それでもナナリーのために懸命に頑張っていた君の姿を。
 ナナリーのために、ゼロとして世界を相手に戦っていた君の姿を。
 ナナリーと、そして皆のために、優しい世界を創ろうとして逝った君の姿を。
 君だけが知る僕の真実は、すべて君が持って逝った。
 だから、僕は僕だけが知る君の真実をすべて抱えて生きていくよ。
 君は優しいから、呪いのような言葉を贈りながらも、僕が生きて幸せになることを願ってくれたのだろう。
 今はまだ笑えない。
 今はもう泣けない。
 君のいない世界で、感情を動かされることはない。
 だけど、空や花を見て綺麗だなと思うことはできる。
 この世界を美しいと思うことはできる。
 そう思ったときに、君に教えてあげたい気持ちになるんだ。
 あんなことがあったよ。
 こんなことがあったよ。
 僕が見聞きしたものすべてを君に報告したくなる。
 そして、気付くんだ。
 君はもうどこにもいないってことに。
 そして、思うんだ。
 今ここにある僕という存在は、君によって生かされているってことに。
 それが嬉しくて、だけど哀しいんだ。
 そういえば、何もかもが君の計画通りだったけれど、ひとつだけイレギュラーなことがあったね。
 ナナリーだ。
 君はナナリーにも嘘をついてわざと自分から遠ざけたというのに、彼女はすべて気付いてしまっていたよ。
 君の真実も、僕がゼロであることも、ゼロ・レクイエムのことも。
 まさかナナリーがブリタニアの代表になるだなんて、君は思いもしなかっただろう。
 ナナリーはとても良くやっているよ。
 君の遺志を継ぐ者として。今を生きるひとりの人間として。たくさんの人の手を借りながら、僕と同じように優しい世界を実現しようとしている。
 彼女はとても強い。君が心配する必要もないくらいに。
 その目を開き、しっかり世界と向き合っている。
 今までの自分はただお兄様に守られるだけの、本当の世界を知ろうとしない愚か者だった。
 彼女はそう言っていたよ。
 そしてひどく後悔していた。
 なぜもっと早く兄の真実に気付けなかったのか。なぜ悪魔などと罵ってしまったのか。なぜもっとしっかりと愛しているって伝えなかったのか。
 自分は綺麗事ばかりで、嫌なことや汚いことはすべて兄に押し付けていたのだと、ひどく後悔していた。
 そんなことはない。押し付けではなく、すべて自らの意志でやってきたことなのだと君は言うだろうね。
 だけど、たとえ君本人がナナリーに直接そのことを伝えたとしても、ナナリーの後悔は永遠に消えないだろう。
 もっとこうしていれば。もっとああしていれば。
 それは、残された者たちが誰しも抱える後悔だ。
 だからこそ、生きているときにしてあげたいことをしなければいけないのに。失ってから気付いても遅すぎるのに。
 僕は君に何をしてあげたかったのだろう。
 ひとつひとつ思い出してみるけれど、それがとても無意味な作業だと気付いて思い出すのはやめにした。
 必要のないことをして馬鹿な奴だと君は言うかもしれない。それから、仕方のない奴だと苦笑いを浮かべるかもしれない。
 思い描く君はこんなにも鮮やかなのに、どうして君はもういないのだろう。
 ときどき不思議になると言ったら、やっぱり君は馬鹿な奴だと言うだろうか。
 ゼロ・レクイエムを後悔したことはない。
 僕たちの罪はあまりにも重すぎたし、あのときの僕たちにとってはあれが精一杯の方法だったし、そうしなければいけないほど世界はどうしようもない状態だった。
 だけど。
 ああ。だけど、どうしてだろう。
 今になって、ひとつだけ思うことがあるんだ。
 もしも。
 もしも、僕たちがあとほんの少しでも長く生きていたら、また違った答えを見つけ出せていたのではないかと。
 今になって、平和な世界を見るたびに思ってしまう。
 どうしてここに君がいないのだろう。
 これは君が創った世界だ。
 君が世界の中心にいてもいいはずだ。いや、いるべきなのだ。
 なのに君はどこにもいない。
 むしろ、悪逆皇帝として世界中の人々から忌み嫌われている。
 わかっていたはずなのに。そうなるよう仕向けたのは僕たちのはずなのに。
 なぜ、今になってこんなにも胸が痛むのだろう。
 くだらない感傷だ。そんなことはせめて優しい世界を実現させてから考えろ。
 君ならきっとそう言うだろうね。
 わかっているよ。
 こんなこと、もう二度と口にしたりしない。考えたりもしない。
 思うことがあるとすれば、それは僕の命が消えるときだ。ゼロという存在が無くなるときだ。
 それまでは、君との約束を果たすために生きていくから。
 君の願いは、僕が叶えるから。
 だから、見ていてほしい。
 僕たちが創っていくこの世界を。
 君に会うとき、君に呆れられないよう頑張るから。
 だから、それまで待っていてほしい。
 そして、もし再び出会えることがあるのなら、今度こそ君に伝えたい。
 あのときは声に出せなかった言葉を、ちゃんと君に伝えたい。
 だから、どうか待っていて。
 愛している。
 ずっと愛しているよ。
 ルルーシュ。
 (09.05.24)