ルルーシュは悩んでいた。
目の前には一つの箱。シンプルにラッピングされたそれはついさっきもらったばかりの贈り物で、中身はまだ確かめていないが、十中八九チョコレートだろう。
今日はバレンタインデー。ブリタニアでも同じ習慣はあるが、ここエリア十一――日本――のように、女性が男性に愛の告白をする日という位置付けではない。しかし、日本文化のおいしいところだけを取り入れたエリア十一では、すっかり日本式のバレンタインが定着している。
となれば、人気のある男子には女子生徒からのチョコレートが集まりやすく、ルルーシュもその一人だった。誰かと比較したことはないが、その数は間違いなくアッシュフォード学園一である。もっとも、ルルーシュ本人はチョコの数にステータスなど感じないし、これは生徒会副会長という肩書きのおまけでもらっているものだろうと思っているので、彼を狙う女子生徒達の想いは全く伝わっていなかった。
そして、今年も山のようなチョコレートをもらったわけだが、悩んでいるのはそのせいではない。紙袋に入れて持って帰ったチョコはナナリーや咲世子、C.C.にお裾分けをした。本当は自分で食べなければいけないのだろうが、さすがに数が多すぎて一人では不可能だ。お返しのことも考えれば、正直バレンタインなんて行事はなくてもいいくらいである。だけど、せっかくもらった好意なので無碍にはできない。バレンタインデーもホワイトデーも大変ではあるが、毎年のことで慣れっこになっているのでこの行事自体は特段悩みの種ではないのだ。
悩んでいるのは、今日の最後の最後に一番意外な人物からもらってしまったことである。
(スザクは何を考えて俺にチョコレートなんて……)
女子生徒の間では、友達同士でもバレンタインにチョコレートを贈り合う習慣ができているようだが、男子生徒の間ではそんなものはない。しかし、男子がチョコの交換をしてはいけない決まりもない。ならば、スザクもバレンタインの雰囲気に乗せられてつい買ってしまい、それを友達であるルルーシュに渡しただけ、と考えるのが最も自然な推測だ。
(俺の気も知らないで)
友達にチョコレートを渡した。スザクの中でそれ以上の意味はないだろう。スザクは生徒会女子メンバー以外からはチョコをもらっていないと言っていた。今日の放課後の予定もないと言っていた。それを聞いてルルーシュは内心ほっとしていたのだ。自分はこれだけもらっているくせに、スザクがもらっていないと知って安堵するのは最低なのかもしれない。だけど、できることなら彼に告白するような女子がいないことを望んでいた。それなのに、帰り際、彼の鞄の中から一つの包みを見つけてしまった。あのときのショックといったら言葉では表せないほどで、なんだちゃんともらっているんじゃないかとスザクを茶化してみたが、上手く表情を作れていたかは自信がない。演技は得意なのに、チョコレートたった一つで揺らぐ自分が少し可笑しかった。
そして、ルルーシュの問いに対するスザクの答えは、全く予想していないものだった。
(俺に渡すつもりだった?いや、本当はほかの相手にもらったか、俺以外の人間に渡すつもりだったけれど渡しそびれて、それを見られてしまったから誤魔化すために俺に渡しただけなのでは……)
スザクが自分にチョコレートをくれた理由について、ルルーシュはありとあらゆる可能性を考えていた。夕飯のあと自室に戻り、こうして悩み続けること早一時間。黒の騎士団の活動やブリタニアの動向など、考えることは山ほどある。チョコレート一つにかまけている暇などない。それなのに、ルルーシュの優秀な頭脳はスザクからもらったチョコレート以外のことを考えられなくなっていた。
「くそ、どうして俺がこんなことで悩まなければ…!」
自分の気持ちを惑わすスザクが憎らしい。
ルルーシュはスザクが好きだった。七年ぶりに再会した友人にそんな感情を抱くのは裏切っているような後ろめたさがあったが、好きなものはどうしようもない。しかし、気持ちを伝えるつもりはなかった。たった一人の友人を、自分のつまらない気持ちのせいで失いたくないのだ。
だから今日のバレンタインだって、スザクにチョコレートを渡すという考えがほんの一瞬だけよぎったが、理性でもって取り止めた。ナナリーと咲世子さんに渡すついでにさり気なく渡せば良かったのかもしれない。でも、渡してしまえば自分の気持ちが収まらないような気がして怖かったのだ。
それなのに、スザクはあっさり渡してきた。自分の気持ちなんて知らずに。
(こんなものもらっても)
自分の気持ちが伝わったわけでも、スザクが気持ちを伝えてきたわけでもない。ただ、友達同士でちょっと渡してみただけという程度のことで、このチョコに意味なんてない。そう思うのに、どこかで期待してしまう自分がみっともなかった。
スザクが握ってきた手首に触れてみる。引き止めるために掴まれただけで、それこそ意味なんてない行為だ。だけど、スザクの手の感触が残っているようで今もまだ少しどきどきしてしまう。
「来週、どんな顔して会えばいいんだ……」
知らずに小さく息を吐き出した。
ルルーシュ・ランペルージ、十七歳。
只今、幼馴染の友人に絶賛片思い中であったが、来週彼と会うのは少しだけ憂鬱だった。
ルルーシュの憂鬱に反し、その後十日もスザクと会うことはなかった。といっても、スザクが全く学校に出てこなかったわけではない。授業の途中から来たり、午前中だけ出たりはしていたので、姿を見なかったと言えば嘘になる。しかし、朝の挨拶を交わす程度でちゃんとした会話はしなかったから、ルルーシュにとっては会わなかったも同然であった。
会うのが憂鬱だと思っていたくせに、実際会わないとなると寂しくなるなんて本当に身勝手だ。
(バレンタインにもらったのだから、ホワイトデーに俺からお返しをしてもおかしくはないよな。だが、もしスザクに本命がいれば何か予定が入っているかもしれないし、そもそも男友達の俺からお返しなんてもらっても迷惑なだけかもしれないし……。いや、たかがお返しごときで悩んでいること自体が滑稽だ。そもそも、なぜ自分が悩まなければならない。俺は渡さないと決めていたのに、勝手にチョコを渡してきたのはスザクじゃないか。意味なんて一つもないだろうにイレギュラーを起こして人の気持ちを引っ掻き回すのが腹立たしい。そうだ、相手はスザクだ。あの天然体力馬鹿に正攻法で責めたって天然で返されるだけ。俺の努力は水の泡になるのがオチだ。ならば、俺のほうからイレギュラーを起こしてやればいい。バレンタインのお返しはホワイトデーにしかしてはいけないというルールはない。そうだ、なぜ気付かなかった。皆と同じホワイトデーではなく、その前にさり気なく渡せばいいじゃないか。そのときのスザクの態度や表情からバレンタインのチョコの意味も判断できるし好都合だ。そうとなればプランを練って……)
ここまでを二秒で考えたルルーシュは早速計画に取りかかった。計画と言っても先日断られた夕飯にまた誘うだけなのだが、お返しを渡すことを最重要事項として密かに決意したルルーシュにとっては大きなイベントだった。
問題は、軍の仕事でまともに学校に来ないスザクをいつ誘うかということだったが、翌日、ちょうど登校してきたスザクと廊下でばったり会ったことでその問題はあっさりクリアされた。
「おはよう、スザク。今日も重役出勤か?」
軽い嫌味にスザクが苦笑いする。
「朝から軍の用事があったんだよ」
「お前はいつも軍だな」
無意識に拗ねたような口調になっていたが、ルルーシュ自身は気付いていなかった。いつも軍を優先させるスザクに面白くない気持ちを抱きながら、今日の目的はそれではないと気持ちを切り替えて笑みを浮かべる。
「ところで今度の土曜か日曜、どちらか空いてないか?」
「日曜日なら今のところ空いてるけど」
「ならばうちに食事に来ないか?」
誘いを口にした瞬間、スザクの顔が一瞬固まったのは気になった。嫌なのだろうかと悪い想像をしながら、気付かなかったふりをして努めて明るく話す。
「試作のケーキを作るんだが、俺とナナリーと咲世子さんの三人では食べ切れそうになくてな。その点、お前がいればあっという間に食べてくれるだろう?」
「僕がものすごく食べるみたいじゃないか」
「実際、よく食べるだろう」
軍ではまともな食事は提供されないのかと思うほどスザクはよく食べる。ナナリーと一緒になって美味しいと言ってくれるのはとても嬉しく、作り甲斐があるというものだ。
「……駄目か?」
すぐに返事をくれないスザクに、やはり迷惑なのかと気持ちが沈みかけたとき、「わかった」とようやく一言返ってきた。
「日曜日だね。お邪魔させてもらうよ」
たったそれだけの言葉に浮足立つような気持ちを感じる。
「そうか、良かった。では時間は――」
ルルーシュは平静を装って日曜日の予定を伝えた。ただお返しを渡すだけだ。スザクの反応を確かめてみるだけで決して告白するわけではない。そう思うのに、内心は緊張でいっぱいだった。告白しないけれどスザクの様子は窺うというのも可笑しな話だが、彼が自分をどう思っているのかは気になってしまう。
教室までの道を連れ立って歩きながら、ルルーシュの気持ちはすでに日曜日へと向かっていた。
そうして迎えた日曜日。
試作のケーキを作るという話は嘘ではなく、夕食後に朝から仕込んでいたケーキを振る舞った。さすがにワンホールを四人で食べ切ることはできなかったので、残りは半分にわけてスザクにお土産で持たせた。お返しを渡すというのになぜケーキをネタに誘ってしまったのだと、仕上げたあとに気付いて自分の迂闊さに落ち込みそうになったが、スザクもナナリーも絶賛してくれたおかげで気持ちが浮上した。我ながら単純だと思ったが、好きな人たちからの称賛の言葉はどうしたって嬉しいのだから仕方ない。
「じゃあ、僕はそろそろ帰るよ」
就寝のためにナナリーが部屋に戻ると、時計を見たスザクがそう告げた。夜もだいぶ遅い時間になっている。明日も学校があるのだから至極当然の発言だ。しかし、まだ目的を達成できていないルルーシュは焦った。
「待てスザク!まだ帰るな!」
「へ?でも時間も遅いし、これ以上いたら迷惑になるよ」
「いや、そうではなくてだな、つまり……」
ルルーシュは言葉に詰まった。
お返しを渡すだけだ。何度も自分に言い聞かせていたのに、いざ渡そうとなると声が喉に張り付いて出てこない。緊張で心臓がどくどくとうるさかった。ゼロとして高らかに演説している自分とはまるで別人だ。
「ルルーシュ?」
「と、とにかく俺の部屋に来てくれ」
すると、先日食事に誘ったときのようにスザクが固まったのがわかって少し傷付く。今日の夕飯といい、自分と二人きりになることといい、スザクにとっては迷惑でしかないのだろうか。ともすれば重くなりそうな気持ちを奮い立たせてルルーシュはダイニングを出た。スザクが大人しくついて来てくれたことに安堵しながら、部屋へと戻る。
鞄の中から包装紙に包まれた箱を取り出すと、一度深呼吸をしてから振り返った。スザクはドアの前で所在無げに立っていた。
「そんなところに突っ立っていないでこっちに来ればいいだろう」
「あー…、うん、そうだね」
どことなくぎこちない動きでスザクが足を進めた。目の前に立った彼に、ルルーシュは手に持っていた箱を差し出した。
「お前にやるよ。バレンタインのお返しだ」
「え、えぇっ?」
「中身はクッキーだ。ケーキを持たせて帰るのにクッキーというのもどうかと思うが、迷惑でなければ食べてくれ」
顔がおかしなことになっていないか。声が上擦っていないか。そんなことを気にしていたらぶっきらぼうな口調になってしまったけれど、言い直す余裕はなかった。
「まあ、お前は気まぐれでバレンタインにくれただけで、俺からのお返しなんてもらっても嬉しくないだろうし、いらなければ捨ててしまっても別に、」
「いるよ!迷惑なわけないじゃないか!」
予防線を張ってつい自分を卑下したような言い方をすれば、すぐさま否定の言葉が返ってきてルルーシュは目を瞠った。見れば、スザクが「あっ」と小さく声を漏らした。
「ほ、ほら…、だって、ルルーシュの作るものはなんでも美味しいし、いらないなんてことは絶対にないよ。それに、僕がバレンタインに君にチョコを渡したのは……」
先ほどの勢いはどこへ行ったのか、スザクの声がどんどん尻すぼみになっていく。一体どうしたのかとルルーシュは首を傾げた。
「ほかに渡す相手がいたけど、渡せなかったから俺にくれただけだろう?」
「なんでそんなことになるのさ!」
なぜか必死な形相のスザクにがしりと肩を掴まれた。一気に顔が近くなり、必要以上に緊張する。
「あれは君に贈るために持って来たって言っただろ」
「でも、そう言ったのはただの方便じゃないのか?」
普通は男が男にチョコを渡すなんて有り得ない。そう思って言えば、盛大な溜め息をつかれた。
「ルルーシュが鈍いのは知ってるし、気付かれちゃいけないと思ってたけど、ここまで勘違いされたら逆に言っちゃってもいいような気がしてきた……」
ぶつぶつ呟くスザクに眉根を寄せる。何やら馬鹿にされているらしい。
「スザ、」
文句を言おうと口を開きかけるが、肩を掴む手に力が籠もったのに気付いて思わず飲み込む。なぜだろう。自分を見るスザクの目がひどく真剣だった。
「日本でのバレンタインってどんな行事か知ってる?」
「女性が好きな男性に告白する日ということになっているんじゃないのか?」
「そうだよ。最近の女の子は友達同士でも渡すみたいだけど、もともとは愛を告白する日だ。それはわかってるよね?」
だからどうしたのかと不思議に思いながら頷く。
「つまり、本来は好きな人以外にはチョコレートは渡さない。ならば僕が君にチョコレートを贈った理由も……わかるよね」
静かに問われ、ルルーシュはどきりとした。この言い振りはまるで告白されているようだ。
スザクが自分に。そう思っただけで顔が一気に熱くなりそうだった。でも、それは絶対にない。有り得ない。
気持ちもないのにスザクはまた惑わすようなことを言う。どうしてこんな酷なことを聞いてくるのだと歯噛みしたいような気持ちになりながら、ルルーシュはゆるゆると首を振った。スザクの反応を見ようとしたことがいけなかったのだろうか。人の気持ちを試すようなことをするから罰が当たったのだろうか。
「お前が俺にチョコレートをくれた理由なんて知らない。知るわけがない。愛を告白する日だって言うなら、それこそ俺に渡すのは見当違いじゃないか。友達だから渡したと、変なことを言わずにそう言えば、」
「好きだからだよ」
ルルーシュはカッとなった。また勝手なことをと、今度こそ文句を言おうとした。適当な気持ちで好きだなんて言わないでほしい。どうせそれも友達に対する好きという意味なのだろう。そんな言葉をもらうくらいなら、初めから何も言われないほうがよっぽどいい。
「言っておくけど、これは友情じゃなくて恋愛の意味での好きだからね」
「ああ、そうだろうな!そうでなければ友達の俺に好きだなんて――」
途中まで言い掛けて、間抜けにも口を開けたままスザクを見た。
「好、き……?」
「うん。好きだよ」
耳にした言葉がにわかには信じられなかった。何か聞き間違いをしてしまったのか、それともスザクの冗談なのか。物事を瞬時に判断できるはずの頭は、フリーズしてしまったのか全く働かない。
「でも、友達の僕に好きなんて言われてもルルーシュは困るだろうし、今のは忘れて。これからも今まで通り付き合って……っていうのは無理かもしれないけど、皆の前では普通に接してもらえたら嬉しいかな」
じゃあ帰るね、とスザクの手が肩からするりと離れた。遠ざかる温もりがひどく心許ない。
「――スザクッ!」
何も考えていなかった。突然好きだと言われたことも、友情ではなく恋愛の意味の好きだということも、まだ信じられないし理解もしていない。ただ、このままスザクを帰してはいけない。その思いだけで、気付けば名前を呼んでいた。そして、引き止めたは良いけれどどう言葉を続けたらいいのかわからず混乱する。ふと視線を落とし、自分の手の中にまだクッキーを詰めた箱があることに気付いた。
「こ、これを持って帰っていないぞ!」
叫ぶように言えば、スザクが少しだけがっかりしたような表情をした。もしかして違う言葉を期待していたのだろうか。そう思った途端、ルルーシュの中で期待が生まれる。
先ほどの告白は本気だったのかもしれない。本当のことを伝えてくれたのかもしれない。だとしたら、ここで何も返事を返さないのはチャンスを無駄にするようなものだ。緊張で震えそうな唇をルルーシュは動かした。
「バレンタインが愛を告白する日なら、ホワイトデーは愛を告白した相手にだけお返しをするものではないのか?」
「え?」
「まだホワイトデーではないが……。俺も……好きだよ。お前の言う意味で。だから、ちゃんと受け取れ」
言い切ると、照れ隠しのように手の中の箱をスザクに押し付けた。我ながら恥ずかしいことをしている。だけど、告白されて迷惑に思うだろうと誤解されるよりはましだ。
「えっと、ルルーシュ……どういう意味?」
「理解しろ!」
「理解しろって……本当にいいの?」
箱ごと手を取られ、ルルーシュはびくりと身を引きそうになった。スザクの手が引き戻す。先ほどよりも近い距離に心臓はさらに早鐘を打っていた。
「君も僕と同じ気持ちだって、本当に理解していいの?」
「――っ、いいと言っている!」
恥ずかしさのあまり叫ぶように言えば、ぐい、と身体を寄せられて腕の中に閉じ込められた。
「す、すざく」
「絶対に駄目だろうなって思ってたんだ。告白もしないつもりだったし、バレンタインも渡さないつもりだった。なのに気付いたらチョコを買ってて、でもやっぱり渡すのはやめようと思ったら君に見つかって、結局みっともなく渡してヘコんだんだけど、あのときチョコレートを買って本当に良かった。夢みたいだ」
感極まったように耳元で囁かれ、ルルーシュの胸もいっぱいになる。スザクは自分を惑わすような酷いことを言うと思っていた。だけど自分のほうがよほど酷い勘違いをしていたようだ。
(スザクも俺と同じように不安だったのか)
真実を知れば、悩んでいたことが随分とちっぽけなように思えた。同時に、安堵と、言い知れぬ幸福感に包まれる。
スザクに渡すつもりの箱を握り締めたまま、スザクの肩に頬を寄せるとルルーシュは瞼を下ろした。全身で感じるぬくもりに、好きという言葉が今さらながらにじわじわと広がっていくようだった。本当に夢みたいだ。
「スザク。お前、さっきは告白してそのまま諦めるつもりだったのか?」
「うん。だって絶対嫌われると思ったから」
「そんなことあるわけないだろう」
「ルルーシュこそ、僕に好きな相手がいるって勘違いしてたよね」
「仕方ないじゃないか。諦めていたんだから」
「なんだ、どっちも最初から諦めてたのか。馬鹿だなぁ」
「お互いにな」
二人笑い合う。どれほど深刻な問題も今となってはすべて笑い話だ。
「じゃあちゃんと誤解を解こう」
スザクの言葉に小さく首を動かした。
「バレンタインのときはまさかこんなに幸せな日が来るなんて思いもしなかった」
しみじみと言われ小さく笑う。自分だってまさか想いが伝わるなんて思わなかった。
「今日は泊まっていくのだろう?」
「え。……ええぇっ!?」
一拍遅れて驚きの声が上がったので、ルルーシュはびくりと身を起こした。
「る、ルルーシュ、それって、そう言う意味?」
「そういう意味とはどういう意味だ?」
わからないという顔をすれば、スザクがぽかんとして、次いでへなへなと力の抜けた身体を預けてきた。
「うん、そっか、ルルーシュだもんね。そうだ、そうだった」
何やら一人で納得しているが、あまりいい意味ではなさそうだとルルーシュは少しむっとする。
「どういうことだ」
「えーと、ルルーシュはまだ知らなくていいかな。いずれは知ってもらわないと困るけど、今はいいや」
「はあ?お前、俺を馬鹿にして」
「好きだよ」
ぴたりと口を閉ざす。笑顔でさらりと言うのは反則だ。だけど嫌な気はしないから、むっつりさせていた顔も次第と緩む。勇気を出してスザクを食事に誘って良かったと思い、心の底から幸せを実感した。
バレンタインは上手くいかなかったけれど、ホワイトデーを前に結果を手に入れた。それは、チョコレートよりも甘い甘いものだった。
(10.02.28)
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スザクver.の「Blue Day」の続きになります。