Merry Christmas

「クリスマスの奇跡?」
「うん。そういう話ってあるでしょ?」
「馬鹿だな、そんなものあるわけないじゃないか」
「ええー、そうかなぁ」
「聞いたことはあるが大抵は眉唾モノだ。信じるほうがどうかしている。そもそもお前、キリスト教だったか?」
「……うっ」
「神社の息子がサンタクロースを信じてどうする」
「それは子どもの頃の話だよ」
「今も似たようなものじゃないか」
「サンタクロースと奇跡は違うよ。ルルーシュこそ夢がないなぁ」
「本当にあるかないかわからないものを信じる趣味がないだけだ」
「でも君だって昔はサンタクロースを信じていただろう?」
「いいや。残念ながら、俺の周りには子どもの夢を守ろうなんて気の利いた大人がいなかったからな。あれは空想の話だと母さんから直接聞かされたくらいだ」
「君の家って……本当に夢がないよね」
「現実的と言ってくれ」
「はいはい。でも、そんな現実的なルルーシュでも、叶えたい夢のひとつやふたつはあるだろう?」
「夢、か。夢は誰かに叶えてもらうものではなく、自分で叶えるものじゃないか」
「そこはもうちょっとノッてくれてもいいじゃないか。ルルーシュってこういうところは冷たいよね」
「でも、もし本当に神様がいて、皆の願い事を叶えてくれるんだったらどんなにいいだろうな」
「でしょ?」
「お前だったら何を願うんだ?」
「僕は、ルルーシュとナナリーと三人でずっと楽しく過ごせますように、かな」
「そんな夢でいいのか?せっかくならもっと自分の望みを叶えるようなものにすればいいのに」
「僕にとっては一番良い夢だよ。それよりルルーシュは?ルルーシュは何をお願いするの?」
「俺?俺は……、皆が、お前とナナリーが、いつまでも幸せでいてくれればそれでいい」
「ルルーシュこそもっと自分の希望を前面に押し出した夢にすればいいじゃないか」
「たとえば?」
「え、えーと、たとえば、世界征服できますようにとか、世界で一番偉い人間になれますようにとか」
「なに言ってるんだ、お前本当に馬鹿か?」
「ルルーシュならそのくらいの野望を持っていても違和感ないって言うか」
「人をなんだと思っている」
「だってルルーシュだし」
「意味がわからないな」
「でもさ、君が世界で一番偉くなれば、きっとすごくいい世界になるだろうね」
「今さら褒めたって何も出ないぞ」
「お世辞じゃないよ、本当だって。君は人の痛みを知っているから、きっと人に優しく出来る世界を作ることが出来るよ」
「……夢物語だな」
「だからこそクリスマスの奇跡だよ」
「ああ、なるほど、奇跡が起こってこの世界が優しい世界になるってことか?」
「そんなのあるはずないってわかっていても信じたいじゃないか。せめてクリスマスの夜ぐらいは」
「クリスマスの夜だから、な」
「今、ロマンチストって思っただろ」
「思ってない思ってない」
「笑ってるくせに」
「いや、お前は純粋でいいなと思っただけだ」
「やっぱり馬鹿にしてる」
「違うって。ただ羨ましいんだよ」
「その言い方が上から目線だと思うんだけど」
「まあ、信じる信じないはお前の勝手だけどな」
「そういう言い方もずるい」
「ほら、拗ねてないでもう行くぞ。会長主催の渾身のクリスマスパーティーなんだから遅刻したら何をさせられるかわからない」
「なんだか凄く気合い入れていたけど、何かあったの?」
「単に学生生活最後のクリスマスだからだろ」
「そういうものかな?誰か好きな人がいるとか」
「好きな人?クリスマスとどう関係があるんだ?」
「あー…、ルルーシュにはあんまりわかんないか」
「だからどういう意味だ」
「君はまだ知らなくていいよ。それより早く行こう。あ、ルルーシュ」
「ん?」
「メリークリスマス!皆に言われる前に言っておかないと」
「お前、同じようなことを誕生日のときにも言ってなかったか?」
「だってルルーシュの一番は何でも僕じゃなきゃ嫌だから」
「……馬鹿だな」
「いいよ、馬鹿で」
「……でも別に嫌いじゃない」
「えっ!?本当?本当に?」
「うるさいな、ほらさっさと行くぞ」
「ねえ、もう一回訊くけどサンタクロースには何をお願いする?」
「さっきと同じだよ」
「でも、さっきのお願いの中には君の幸せが入っていなかったじゃないか」
「お前たちが幸せなら俺は幸せなんだ」
「駄目だよ、僕たちだけじゃなくて君も一緒に幸せにならなくちゃ」
「そうか?」
「そうだよ」
「ならば、お前が願えばいい」
「え?」
「お前が俺の幸せを願ってくれればいいだろう?そうすれば皆で幸せだ」

 くるりと振り返ったルルーシュは、すぐに前を向いてしまった。
 だけど、その顔はとても楽しそうに笑っていた。
 嬉しくてスザクも自然と笑顔になった。
 そう、ルルーシュが皆の幸せを願うのならば、自分がルルーシュの代わりにルルーシュの幸せを願えばいい。
 こんなに簡単なこと、言われるまで気付かなかったなんて不覚である。

「わかった。君が願わない分、僕が君の幸せを願うよ。だから君も僕のことを想ってくれる?」
「当り前だろう」

 大きな奇跡じゃなくていい。
 ずっとずっと一緒にいることが出来たなら、それだけでひとつの奇跡。
 (10.12.25)