チョコレートケーキ

 甘い匂いが部屋いっぱいに広がっていた。
 明るい室内。花が飾られたテーブル。綺麗に磨き上げられた床と窓。そして、甘い甘いチョコレートの香り。
 ピカピカのガラスからは外の景色が良く見えた。雲ひとつない青空。葉っぱを落とした木々は寒そうに枝を揺らしているけれど、先週までに比べたら今日はだいぶ暖かい。休日として申し分のない一日である。

「ご機嫌ですね、お兄様」

 ふいに声をかけられ、ルルーシュはくるりと振り返った。そこには愛しの妹がにこにこと笑みを浮かべていた。

「いつもと同じじゃないか?」
「いいえ、今日は朝からずっとご機嫌です」

 自分では普段と違う自覚はないのだが、ナナリーにはそう見えるのだろうか。小さく首を傾げると、愛らしい笑みが深まった。

「スザクさんがいらっしゃるからですか?」
「はっ、え、……えっ!?」

 爆弾発言に動揺して鍋に手が当たる。かろうじて床には落とさなかったが、がしゃんという金属音がキッチンにうるさく響いた。

「あら。動揺してますね、お兄様」
「な、な、何を言っているんだナナリー、確かにスザクに会えるのは嬉しいが、それはお前だって同じだろう?」
「私はスザクさんがいらっしゃるからお兄様のご機嫌がいいのですかと訊いただけで、会えるから嬉しいのですかとは訊いていませんよ?」

 反論しようと開きかけたルルーシュの口は、しかしこれ以上は何を言ってもやぶ蛇でしかないことを悟り、ぱくぱくと空気を吸い込むだけだった。

「それに、お休みの日の朝からこんなに甘いチョコレートの匂いをさせていたら、私じゃなくても気付きます」
「これはお前とスザクと咲世子さんに食べさせるために作っているだけで、別にほかの意図はまったくもって、」
「ふふっ、わかりました。では美味しいデザートが出てくるのを楽しみに待っていますね。私はしばらく咲世子さんとお部屋にいますから、今日がバレンタインデー本番のお兄様のお邪魔はしません。ご安心ください」

 何もかもお見通しと言わんばかりの笑みを浮かべたナナリーは、咲世子を呼ぶとキッチンを出ていった。咲世子もどことなく訳知り顔だったような気がするのは目の錯覚だと思いたい。
 呆然と二人を見送り、リビングのドアが閉まった音を聞くと、ようやくルルーシュはゆるゆると息を吐き出した。

「俺はそんなにわかりやすい態度をしているのか……?」

 時間は午後三時。冬の日にしては珍しく麗らかな陽気だ。
 そして今日は二月十三日。明日は言わずとしれたバレンタインデーである。ルルーシュはそれほど意識していないが、リヴァル曰く、男子が一年で一番心躍らせる日らしい。「その分、もらえなかったときの帰り道は人生終わらせたいくらい落ち込むけどな、まあ女子からもらうチョコレートの数が学園一のルルーシュにはもてない男子の男心はわからないだろうけど」とやけにしみじみ語っていた。

「ルルーシュもスザクもチョコには困らなくていいよなぁ」

 そもそもブリタニアにおけるバレンタインはチョコレートの有無を気にするような行事だっただろうかと内心首を傾げたけれど、溜め息をつきながらぼやくリヴァルを前に何も言えなかった。
 (スザクもきっともらうんだろうな)
 自分がもらうチョコには無頓着なルルーシュだが、スザクが受け取るであろうチョコは大いに気になった。
 明日は十四日。バレンタインデー当日だ。当然、お祭り好きの会長が黙っているはずもなく、朝から大がかりなイベントが行われる。そのどさくさに紛れて本命の相手にチョコレートを渡そうとする生徒も出てくるだろう。ルルーシュが懸念しているのはそのことだ。
 名誉ブリタニア人として最初は差別を受けたり遠巻きに見られていたスザクも、生徒会の一員となったことで次第に学校に馴染んでいった。最近は顔が可愛いとか女の子に優しいとか、そういう理由でスザクに好意を寄せる子もいるようだ。付き合いたいとまでは思わなくても、ファンだという女子生徒から義理チョコをもらうかもしれない。
 (別に相手が全部本命とは限らないし、義理チョコなんて所詮はお菓子の受け渡しにすぎないし、だから俺が心配するようなことは何もないわけであって、)
 優秀な頭の中で言い訳とも呼べることをぐるぐると考えながらも、ルルーシュの手は器用に動いていた。落ち込みそうになったり不安になったり、ともすれば暗くなりそうな気持ちを浮上させたのは、先ほどからキッチンに充満している甘い香りだった。
 ナナリーが言っていた通り、今日はスザクが来る。夕飯を食べに来いと一昨日の放課後に誘った。スザクは「本当?ルルーシュのご飯久しぶりだから楽しみだな」と無邪気に喜んでくれたけれど、ルルーシュとしては別の目的があった。
 バレンタインデーだ。
 どうせ当日は会長命令で朝からばたばたしっぱなしだろう。チョコレートを渡すことにこだわっていないけれど、日本では女の子が好きな男の子にチョコをあげるのだとスザクが以前言っていたから、もしかしたら欲しがるかもしれないという理由で渡すだけなのだ。それ以上の意味はない。だからこっそり渡そうかと思ったのに、大勢のチョコレートに自分のチョコレートが紛れてしまうのは嫌だと思ってしまった。スザクに限って自分とその他大勢のものを一緒にすることはないだろうと信じてみても、どこかもやもやとした気持ちが拭えない。その結果が今日の夕食だった。
 (スザクはただ夕食に誘われただけだと思っていそうだな。ナナリーにはどうやらばればれだったようだが……)
 言われてみれば、確かに朝から気分は良い。キッチンに立つのも普段以上に気合いが入っている気がした。
 チョコレートケーキを出されて、果たしてスザクは気付くだろうか。ケーキとは別にチョコも用意しているものの、喜んでもらえるかどうか正直自信がない。
 友達以上の関係になって数ヶ月経つのに、自分のどこをスザクはいいと思ってくれているのかルルーシュにはいまだに謎だった。もしかしたら、そういう自信のなさがバレンタインデー当日にチョコレートを渡すことへの抵抗感を抱かせたのかもしれない。自分が絶対に一番だと、自惚れることは出来なかった。

「ルルーシュ様」

 背後から呼ばれびくりとして振り返ると、ナナリーについて行ったはずの咲世子がいた。独り言を聞かれてしまったような恥ずかしさを感じつつ、表面上は平静を装って「どうかしましたか?」と尋ねる。

「お邪魔をして申し訳ありません。実はスザク様がいらしていて」
「スザクが?もう?」

 その名前と予定よりもかなり早い来訪に一気に緊張する。まだまだ余裕があると思って先にケーキから作り始めたので、料理のほうは下準備すら終わっていない。こんなときでもスザクはイレギュラーらしい。しかし、鍋でチョコレートを溶かしている最中のルルーシュはキッチンを離れることが出来なかった。

「すみませんが、スザクにここまで来るよう伝えてくれませんか」
「はい、かしこまりました」

 咲世子を見送ると、さてどうしたものかと思案する。せっかく夕食の席でケーキを披露しようと思ったのにこれでは計画が台無しだ。ゲストに手伝いをさせるわけにもいかないし、スザクにはナナリーの相手をしてもらおう。そう考えたところでスザクがキッチンに顔を覗かせた。

「ごめんルルーシュ、ちょっと早すぎたかな」
「当たり前だ。こちらにも段取りというものがあるんだから、早くなるならなるで事前に連絡しろ」
「本当にごめん。少しでも早く君に会いたかったからうっかりしてた」

 照れくさそうに笑うスザクだが、そんな科白を聞かされた自分のほうが恥ずかしいと心の中で訴える。

「まあいい。食事の用意はまだまだ先だから、こっちの準備が終わるまでナナリーと話していてくれないか」
「僕はここにいるよ」
「いるのはいいが、暇だぞ?」
「ルルーシュの後ろ姿を見ているだけで充分」
「……勝手にしろ」

 また恥ずかしいことを、と口の中で呟いてルルーシュは鍋に向かい直った。目の前にはチョコレートがある。あらかじめ温めておいた生クリームに細かく刻んだチョコレートを加え、ケーキに使うクリーム用として溶かしていたのだ。キッチンの隅からこちらをじっと見られるのは居心地悪いことこの上ないが、恥ずかしいやつは放っておこうとケーキ作りに集中する。
 生クリームと馴染ませたチョコレートが出来上がると、ボウルに移して粗熱を取り、今度は泡立てる作業に入った。カチャカチャと心地良いリズムがキッチンに響いた。

「ねえ」
「ほわあぁ!」

 突然背後から声を掛けられ、ボウルを落とさないよう慌てて抱え直す。

「い、いきなり話しかけるな!」
「ルルーシュがびっくりしすぎ。それより、これってチョコレート?」
「見ればわかるだろう」

 こんなに甘ったるい充満させておきながら実はチョコレートじゃなかったらそっちのほうが驚く。

「角が立つまで泡立たせなければいけないんだから離れろ」
「じゃあ先に味見させて」
「味見?」

 振り返ったタイミングで顎を肩に乗せられ、声には出さずに悲鳴を上げた。顔がすぐ近くにあって一気に心拍数が上昇する。どきどきとうるさく鳴る心臓の音がスザクに聞こえるのではないかと、違う意味でも緊張してしまった。

「味見」

 ね?と促され、ルルーシュは眉を寄せた。

「お前は子供か」
「うん、子供」
「ごねるな。いいから離れろ」

 ぐいぐいと肘で押し返してみても鍛えられた身体は動かなかった。でかい図体で我儘で言うのだから子供よりもタチが悪い。
 これではいつまで経ってもケーキを完成させることが出来ないと溜め息をついた。仕方なくスプーンを取り出して、作りかけのチョコクリームを一口分乗せた。

「ほら」

 スプーンをスザクの口許に運ぶ。しかし、何故かふるふると首を振られた。

「それじゃない」
「それじゃないって、チョコの味見をしたいんだろう?」
「味見はしたいけどスプーンじゃなくて」

 ようやく肩から離れたスザクがルルーシュの手からスプーンを奪い取り、シンクに置く。

「だからさ――」

 何をするのかと見守っていると左の人差し指がボウルへおもむろに伸ばされて、思わず「あっ」と叫んだ。チョコレートを掬った指はそのままルルーシュの前に突き出された。わけがわからず首を捻る。すると、にこりと笑みが返って来た。

「舐めて」
「は…はああぁ!?」

 素っ頓狂な声を上げ、反射的に後ずさる。が、それはスザクの右手によって阻まれてしまった。

「ルルーシュも味見するんだよ」
「なっ、だ、だからと言ってなんでお前の指を舐めなければならない!」
「なんとなく?」
「なんとなくでボウルに指を突っ込むな!」
「そんなに舐めたくない?」
「当たり前だ!」

 睨み付けてみてもスザクは離れない。むしろ威嚇するルルーシュを楽しんでいる風情すらあった。

「仕方ないなぁ」

 ふう、とわざとらしく息を吐き出したスザクは、チョコレートのついた指を自分で舐め取った。安堵して肩の力を抜いたルルーシュだが、

「じゃあさ、代わりにルルーシュの指を舐めさせてよ」

 次のスザクの言葉に今度こそ盛大に顔を引き攣らせた。

「ば…、ば、ば…っ」
「ば?あ、もしかしてルルーシュ、バレンタインデー意識してくれてた?」

 バレンタインの単語に一瞬思考を停止させる。これだけチョコレートに満ちた部屋にいるのだ。気付かないほうがどうかしている。でも明日がバレンタインデーだからチョコレートケーキを作っているとは限らないじゃないか。でも本当は食事のあとに別のチョコを渡して、明日はバレンタインだからと種明かしするつもりだった。それをまさかこの場で指摘されるとは。そもそもバレンタインなんて興味のなさそうな顔をしていたくせに、何故このタイミングで言ってくるのか。
 (これだから天然はっ!)
 実際に天然の発言なのか、それとも計算が働いた結果の発言なのか、そんなことはどうでもいい。問題は、今さらバレンタインとは関係ないと嘘をつけなくなってしまったことだった。

「そっか、嬉しいな」
「お、おいっ、俺はバレンタインとは一言も、」
「ルルーシュからチョコをもらうのが夢だったから、でもルルーシュは照れ屋だし男が男に渡すのはおかしいって言いそうだから無理かなと諦めてたんだよね」
「……人の行動を勝手に予測するな」
「うん、杞憂だった。ごめん。でもこのケーキって皆で食べるんだろう?」
「それは……もちろん」

 本当は皆と違う、スザクだけのチョコを用意しているとはさすがに言えなかった。

「だからこのチョコクリームを一番に舐めさせてもらいたいんだ。駄目?」
「ならばわざわざ指で舐めさせなくても…!」

 そんな恥ずかしいことは断固拒否したい。しかし、うっかりスザクの目を見てしまってルルーシュは後悔した。そこにあったのは期待に満ち溢れた瞳だった。まるで犬がご主人様から出される食事を今か今かと待っているような瞳だ。
 ちらりとボウルに目をやり、再び溜め息を吐き出した。
 こうなったらスザクは頑固である。ルルーシュが希望を叶えるまで梃子でも動かないだろう。
 (普段は上官の命令は絶対だと言って、死ねという命令があれば本当に死んでしまうような人間のくせに、なんで俺の言うことは聞けないんだ)
 それを甘えられている証拠だと考えることは出来ないルルーシュだった。こうしている間も時間はどんどん過ぎて行く。ケーキはおろか料理の下準備すら出来ていない状態でははっきり言って落ち着かない。意を決すると、ルルーシュは険しい視線をスザクへと戻した。

「これをやったらもう邪魔しないな」
「うん」
「一回きりだからな」
「うん」

 スザクの顔は楽しそうだ。からかわれているのではと疑念が湧くけれど、ここでさらに一悶着起こして無駄な時間を過ごすのはもったいなかった。「わかった」と短く応え、手を洗ってからタオルで拭く。そこまで神経質にならなくてもという声には、うるさい!と一喝した。
 クリームの表面に指を伸ばし、若干の躊躇いの後、思いきって掬い取る。

「ほら、さっさと舐めろ」

 ぶっきらぼうに人差し指を差し出せば、もう少し可愛く言ってよとブーイングされたけれど知ったことではない。早くしなければ指先からチョコレートが落ちてしまう。

「しょうがないなぁ。じゃあいただきます」

 しょうがないは俺が言いたい科白だ。その文句は、スザクに手首を掴まれたことで飲み込んだ。翡翠がじっと自分を見つめてきて自然と胸が高まる。
 スザクは両手で大事そうにルルーシュの右手を引き寄せた。そして口許に近付けると食むように指を咥えられた。指の背、腹、爪の先と、隅々を舐めつくすかのように舌を這わせられる。その様子はまるで最中に自分のものを舐められているような錯覚を起こさせ、ルルーシュの頬が一気に赤くなった。

「っ、すざく、もう離せ」
「なんで?」
「もうチョコの味見はしただろうっ」
「まだだよ」

 赤い舌先が中指、薬指、小指を順に辿った。

「ルルーシュは全部甘いから、全部舐めて確かめないと」
「何、馬鹿なこと言って…っ」

 スザクの顔が近付いたかと思えば、突然キスが降ってきた。薄く開いた唇の表面を、先ほど指を舐めていた舌がなぞる。そのまま咥内を犯されるけれど貪るような激しいものではなく、本当に味見するみたいに丁寧にゆっくりとした行為だった。触れていない場所はないのではないかと思うほど舐められ、絡んでいた舌がようやく離れた頃にはルルーシュの息はすっかり上がっていた。
 膝から力が抜け、ずるずると床に座り込んだ。スザクも一緒になって腰を下ろすと労わるように髪を撫でてきた。

「……味見じゃなかったのか」
「味見だよ。ルルーシュの」

 ぎろりと睨んでも、スザクの顔はへらへらとしたままだ。最初からこれが狙いでチョコの味見なんて強請ったのではないか。

「でも、ルルーシュのチョコレートを一番に食べたかったのは本当」
「ふんっ、どうだか」
「それから……」

 おもむろに立ち上がったスザクは、キッチンの入口に置いていた鞄から何かを取り出すと再びルルーシュの前に座った。

「はい、これ」
「なんだ?」

 手渡されたものを見て首を傾げた。赤いリボンでラッピングされた箱は、自分というよりナナリーに似合いそうな気がした。

「一日早いけど、僕からチョコレート」

 ルルーシュは目を丸め、まじまじとスザクを見つめた。恥ずかしいからあんまり見ないでよと苦笑いされてもすぐに反応を返すことが出来ない。
 自分からスザクにチョコレートを渡すパターンばかりを想定していたので、逆に渡されることはまったくの予想外だ。どちらが贈ってどちらが贈られると決まっているわけではないものの、日本人のスザクは自分から贈るなんて考えてもいないだろうと思い込んでいた。

「……びっくりした」
「ルルーシュからのチョコが欲しいって思っているばかりじゃないよ。僕だってちゃんとルルーシュにあげたかったんだ」
「ああ、ありがとう。驚いたけど……嬉しい」

 ぽつりと言えば、スザクが満面の笑みを浮かべた。まさか、チョコの味見をしたいと言ってきたりキスをしてきたりしたのは照れ隠しのつもりだったのだろうか。それとも、渡すための勢いを付けておきたかったのか。真相は不明だが、おかげでこちらは随分と恥ずかしい思いをさせられた。最初から普通に渡しておけばいいのに、と心の中で呟いた文句はルルーシュの照れ隠しだった。
 いつまでも座り込んでいるわけにはいかないと、二人揃ってようやく床から立ち上がる。

「ごめん、本当にもう邪魔しないから。じゃあ僕はナナリーのところに行ってるね」

 チョコを渡すためとはいえ、少しは申し訳ないと思っているのだろう。キッチンを出て行こうとしたスザクを、しかしルルーシュは呼びとめた。

「あとでと思っていたけれど気が変わった。俺の部屋に来い」
「へ?なんで?」

 エプロンを外し、キッチンを離れたルルーシュにスザクが不思議そうな顔をする。

「俺のチョコレートを一番に食べたいんだろう?俺だって、ちゃんとお前に渡したいと思っているんだからな」
「ルルーシュ、それって……。ありがとう!本当に嬉しいよ」
「おい、くっ付くな!」

 抱き付いてきたスザクを引き剥がそうとするけれど、ぎゅうぎゅうと抱き締める腕の力は強くて、結局抜け出すことを諦めた。
 チョコひとつで喜んだり、かと思えばいきなり予測不可能な要求をしてきたり。まったく困ったものだと苦笑いしてみても、その困った相手が好きなのだから仕方がない。何より、こんな自分をスザクは本当に好きでいてくれた。スザクの想いがわかっただけでもバレンタインデーに感謝したいくらいだ。
 (そうだな、もらってばかりじゃなくて、たまには自分からもちゃんと渡さないと)
 チョコレートを渡すときに、好きという言葉も一緒に贈ろう。そしたらスザクはどんな顔をしてくれるだろう。数分後にはわかるはずの結果にルルーシュは口許を緩めた。
 今はまだ声には出せないから、胸の内で「好きだよ」と囁いて。
 (11.02.13)